【第13回】
《と》 自主自戒のことば~その(23)
「 3つの臨床言語 (3 languages clinical medicine) 」
わたしが臨床には3つの言語があると提唱したのは,1982年のことです。まず第1に患者さんの訴えを聞く「医療面接」(問診)は「日常語」です。
現在、殆どの大病院や個人の病院でも、医師のデスクにあるものはパソコンです。医師はパソコンに向かって患者さんの話を聞く。そして患者さんの訴えをパソコンに打ち込んでいく。殆ど患者さんの顔を見ない。これでは「医師と患者」の信頼関係を築くというは机上の空論になります。
第2に身体所見を丁寧に視る「身体診察」(視診)は「身体語」です。60年前まで行っていた医師が綿密な診察をする代りに、今ではCTスキャン、MRIに代表される機械的診断法が主流となってしまいました。
そして第3は聴診です。心臓の心音・心雑音や、肺の呼吸音、そして胃や腸の雑音を聴くのは「聴診による診察」(聴診)は「臓器語」です。
この3つを必ず実行している医師は、果たして日本だけではなく、世界で何パーセントいるでしょうか?
身体診察の中で一番大切なのは「聴診」です。現在、多くの医師の中には聴診器を持ってはいるが、ベッドサイドで使ったことがない方々がいますが、その理由は大学で聴診を指導する医師がいないことが最大の原因だと思うのです。実際、聴診が苦手なドクターが年々増えていてるように思われます。わたしは毎日、自分の心音を聴き、異状がないかを確かめることが、自主自戒であると思っています。
《く》 自主自戒のことば~その(24)
「 一生続ける研究を(continue your life long research) 」
2022年10月31日(月)、NHK朝のニュースで知ったのですが、カナダ人女性動物研究家「アン・ダッグ」のことが、最近福岡放送局から紹介されました。
このニュースを観た方も多いと思いますが、彼女は若いころ単身でアフリカで1年間住み、膨大な枚数に及ぶ写真を撮り、野生のキリン(ジラフ:学名:Giraffa camelopardalis)の調査研究を次々と発表して続けてきましたが、世界の動物学会でも認められずにいました。女性の研究者として最も有名なのはポーランド生まれの化学者・物理学者「マリア・キュリー」でラジウムの発見で有名ですが、その他にも5名の女性科学者が活躍してきました。
彼女が、大学に籍を置かず、独自の研究を行い、世界でもキリンの研究を行っている科学者は稀です。現在89歳ですが、日本を訪問し、福岡の高校生に対して「若い人は自分の思う事に集中して勉強すれば、必ず明るい未来が待っています」とエールを送りました。最近、彼女は国際的にも権威ある賞を授賞しました。わたしもこのニュースを見て、世界には立派な学者がいるのだということを改めて知り、「わが道を行く」ということばに改めて励まされました。