ジェックスにはペースメーカーに関して様々なメールが届きます。
ペースメーカーについては循環器疾患を扱う多くのサイトでも既に取り上げられているかと思いますが、正しい情報をより多くの方に知って頂きたく、当法人サイトにおいて掲載することにいたしました。現在ペースメーカーをご使用の方はもちろん、そうでない方も理解を深めるためにお役立て下さい。
なお、回答にあたりましては、当法人役員の他、大阪医科大学胸部外科(心臓血管外科)森本大成先生に多大なご協力を頂きました。
※ペースメーカーを装着されている方へ:こちらの回答は個々のケースに対応したものではありません。あくまでも参考材料とし、ご自身の主治医とよくご相談下さい。
はじめまして。心臓ペースメーカーについてお伺いしたいことがありメールしました。
携帯電話はどのくらい近づけるとダメなんでしょうか?
ペースメーカーを入れている人は、ペースメーカーが止まらない限り死ぬことはないのでしょうか?
脳死にならないと死ねないってことですか?
回答:
現在ペースメーカーは次のような方法で皮下に埋め込むのが一般的です。
すなわち、左あるいは右の鎖骨の下3cmくらいの所に局所麻酔薬を皮下注射し、鎖骨の下を走る太い静脈を取り出します。その静脈にペースメーカー本体と心臓を結ぶリードとよばれる細い導線を挿入します。レントゲンで透視しながら、このリードの先を右心室の先の適切な位置に置いて固定します。そして、ペースメーカー本体は、鎖骨の下の皮膚を切開した所で皮下に埋め込みます。
子供の場合には、運動が激しいために心臓の外側に直接にリードを植え付けることがあります。この場合には、ペースメーカー本体は、左側肋骨の下に植え込みます。
このペースメーカーは電池により自動的に電気刺激を発生し、この電気刺激を心臓に伝え、心臓はこの電気刺激を受けて収縮するということを繰り返しています。ペースメーカーは、超小型の精巧なコンピューターのようなものです。したがって、外部からの電気や磁力に弱いという欠点があります。
普通の家庭で使用する電化製品はおおむね大丈夫ですが、家庭や職場、あるいは医療施設などの公共の施設で注意した方が良いものや、絶対に避けなければならないものがあります。それらを下記に列挙します。
電気製品を使う場合、直接からだに電気を通すもの、強い電磁波を出すものは使用しないで下さい。たとえば、電磁調理器、電極を貼るタイプの治療器などは、使用したり近寄ったりしない方が安全です。また、30型のような大型テレビのブラウン管を持ち上げようとして抱きかかえることは避けて下さい。 電気毛布や敷き毛布などは、普通に使っている限り影響を与えることはありません。今回ご質問の携帯電話ですが、上記のように使用の仕方によっては影響を受けることがあります。携帯電話は電源スイッチが入っている限り、たとえ呼び出し中や通話中でなくとも、携帯電話の基地局に対して電波を出すことがあります。その電波は常に一定の強さというわけではなく、その携帯電話が置かれている場所や状態に左右されます。電波が弱い場合やペースメーカーとの距離が離れている場合には影響は出ません。
一般には、ペースメーカー本体から携帯電話を22cm以上離すことで問題はなくなります。22cm以内に近付けない限り問題ありません。したがって携帯電話はペースメーカーを植え込んだ部位とは反対側の耳で使用する場合には問題ありません。
ペースメーカーは心臓に対して電気刺激を伝えるだけです。ペースメーカーは弱った心臓を強くするものではありません。ペースメーカーの電気刺激を受けて収縮するのは、心臓(の筋肉)です。ですから、心臓が弱ってしまえば、いくらペースメーカーで電気刺激を与えても心臓は収縮しなくなります。ご安心下さい。ペースメーカーを入れていても、全く普通の人と同じ死を迎えます。ペースメーカーを入れている人が特別、脳死になりやすいということもありません。
ご質問は、質問フォーム「あなたの症状にお答えします」からお問い合わせください。