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『みんなパスカる!』   

『みんなパスカる!』  

髙階經和

 

 昨夜のNHK 新番組『みんなパスカる!』(2021年5月3日)をみた。参加者はオンラインで、司会者が「今日は皆さんでパスカりましょう」と話し始めると、参加者の一人が「パスカるって何ですか?わたしにはよく分からないのですが・・」司会者「ああそうでした。『パスカルの原理』というのはご存知ですよね?中学校の頃に物理で習ったと思うのですが」参加者「ええ」と全員スクリーンの中で頷いている。「パスカルの法則は密閉物体に加わった力は、その力を変えることなく全体に伝わるという理論でしたね。今日はその原理を利用して、3つの場面で皆さんに考えて頂き、1つのテーマについて色々な解決法を考えて頂こうと思っています。つまり“発想の転換のコツ”を考えて行こうという企画なのです。」別の参加者から「つまり発想ゲームですね?」

 そこに登場したのが、漫画家を連想させるベレー帽をかぶった女性で、眼鏡をかけてホワイト・ボードの前に立ち「わたしは『グラフィック・ファシリテーター』といいまして、色んな会社などに出向いて行き、会議の内容を皆さんの前でホワイト・ボードにイラストで描いていくのです。そのイラストに短いコメントを付けていくのが私の仕事です」と自己紹介した。つまり参加者の発想を目の前でイラストに描き、どの発想が一番良いかということを5名の参加者に決めさせるというユニークな番組であった。

 

①「最初のテーマは、親子がステーキ・レストランに行った時、子供は料理のお肉がくるまでジッとしていない。どうすれば、子供をテーブルにステーキが来るまで静かにさせられるか?」と司会者が問いかける。参加者はそれぞれの立場で「漫画の本を読ませればいい」「ゲームをさせればいい」「音楽を聴かせればいい」などの意見を出したのだが(参加者の1人は明らかに小学生で あった)、その参加者が「料理の始まりから出来上がりまでを大型のTVで見たい」と発言した。結局、この参加者の発想が取り上げられてレストランには大型のTVスクリーンが設置され問題は解決された。

 

②「上高地にあるホテルの支配人が『どうすれば車椅子で来られるお客様に、河原の砂利道を通り周りの景色を楽しんでもらえるか』と考え、その問題を解決しました」
「さて、皆さんどうして解決したかと思われますか?」参加者たちは色んな意見を言い出したが、正しい答えは出なかった。しかし1人の女性参加者の「人力車を借りればいいと思います」という発想がそれに最も近いものであった。ホテルの支配人が自ら考え作り出したのは、右左2本のL字型になった棒を車いすの前輪を支えている部分に取り付けると、直ちに人力車に変身した。この支配人は「日本中のホテルでもこの方法を使えば、車椅子で来られるお客様も、もっと旅行を楽しんで頂けると思います」と支配人自ら彼の発想で出来上がった「インスタント人力車」に乗り、ホテルの従業員に曳いてもらっている光景が映された。この発想がやがて社会貢献に役立つものになると確信し、誇らしげに語っていた。

 

③「東北地方のこけし人形は高度成長期には全国に知れ渡り、製作が追い付かないくらいの売れ行きであったが、その後、伝統工芸のこけし人形は僅かな地震の揺れでも頭部が重すぎるために転倒しやすいこともあって人気は落ちてしまった。しかし、それをあることに気付き一気に挽回させた。その方法とは?」
「さて、皆さんはどうやってこの問題を解決したと思いますか?」と司会者が言い出すと、或る参加者は「形を変えないで問題を解決するためには底に重しを入れて重心を下げれば良いのでは?」また他の参加者は「現在の伝統的な形にとらわれず、形を変えた方が良いのでは」と様ざまな意見がでた。
 この意見の一部始終をイラストレーターがホワイト・ボードにイラストで素早く描いていく光景は、さすがにプロだと思い感心した。NHKが企画した番組の中で、現在一番人気の高い『チコちゃんに叱られる』よりも人気が出るのではと思った。その理由は、チコちゃんの質問に回答者が持っている知識で答えるという受動的番組であるが、『みんなパスカる!』という番組は、反対に参加者がそれぞれの意見を出し合って「三人よれば文殊の知恵」という積極的スタンスの番組である。
 司会者が「あるこけし人形制作者が “フランス人形は揺れて人形が倒れた時、ライトが付くようになっている”ことに気付き、こけし人形にも使えると思った。こうして現在のこけし人形は倒れたり、揺れを感じたりすると底のライトが付く様になっています。」とコメントした。

 

 わたしは久し振りに良いTV番組だと思った。殆どのTV局は「お笑い番組」「料理番組」「スポーツ番組」「旅行番組」である。決して批判する心算はないが、似たり寄ったりで面白くない。知的な好奇心を引き出すような番組を望んでいるのは、わたし一人ではないだろう。今回の『みんなパスカる!』は久し振りに良い物を観たと感じた次第である。

 今日では、AI(人工知能)やVR(仮想現実)などが幅を利かせる時代になった。もしシャーロック・ホームズ探偵の原作者である「コナン・ドイル」(彼自身は内科医として開業していたが、彼の友人の外科医「ジョーゼフ・ベル」が周到な推理方法、そして診断能力を発揮していたので、彼をワトソン博士として彼の小説「シャーロック探偵」に登場させた)に相談すれば、彼は喜んで「シャーロック・ホームズ」を蘇らせ、「パスカルの原理」ではないが、彼独特の推理分析法で色んな問題を解決していくのではないだろうかと思った。

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