日本語訳 監修 木下佳代子 ジェックス参与
緩和ケアは、病状の進行状況の如何にかかわらずすべての患者にほどこされるべきものです。今月のテーマとして、心不全患者のための緩和ケアの必要性についてよく考えてみましょう。
心不全は重篤な症状や死亡を引きおこし、現在のところ、世界中で3800万人以上におよびます。またその患者の多くが、COPD, 糖尿病、認知症、腎不全や高血圧等の合併症を患っています。心不全患者の場合、がん患者と同程度の息苦しさ、痛み、吐き気、倦怠感、食欲不振、便秘などの症状に苦しんでいることが多く、それらは患者だけでなく、家族、介護者にとって精神的な苦痛も伴うことが考えられます。これらの症状に効果的に対応できなければ、患者のQOLは、不十分なものとなるでしょう。心不全の進行は予測できないことが多く、その症状をコントロールすることも難しくなります。死期が予測できないことは、患者や家族にとって、病気の予後について考えたり緩和ケアの導入について考える機会が少ないことを意味します。
進行性心不全は、一般的に高齢者で入退院を繰り返す患者によく見られる症状で、非血液性悪性疾患の場合と比べても生存率は劣ります(出展:Medicine today, June 2019, volume 20, number 6)。慢性心不全の生存率は、1年で81- 91%、5年で52-63%です。(Heart Foundation Australia)
進行性心不全の症状であれば、患者が病院で治療しているか家庭で治療しているかにかかわらず、私たちが患者や患者家族に対して適切なサポートとして緩和ケアを提案することは至極当然なことでしょう。
オーストラリア国立心臓財団、オーストラリア・ニュージーランド心臓病学会の「オーストラリアにおける心不全の予防、発見、治療のための指針2018年」によると、下記の場合に緩和ケアの導入を検討すべきであるとしています。
・進行性心不全の患者は、末期症状を緩和し、QOLを向上し、再入院や救急部門への転送を減らす
・心不全の末期に向かう早期の段階で緩和ケアの導入を考える
考慮すべき他の実践点:
・患者には、どの様な状態であっても、診断後すぐにACPを勧めるべきである。
・ICD 装着している患者に対しては、患者、家族、心臓専門医との間で、作動を停止するべきかどうか十分に話し合う。
この分野の理解をより深めるための役に立つ資料として下記URLを参照してください:
(URLをクリックすると資料は英文で表示されます。お手伝いが必要な場合は、Julie宛てにメールをください)
・「難しい会話―心不全患者に終末期についての話をする」
- URL: https://www.bhf.org.uk/informationsupport/publications/living-with-a-heart-condition/difficult-conversations—talking-to-people-with-heart-failure-about-the-end-of-life
- ・「大人の慢性心不全:診断と治療」 (英国国立医療技術評価機構(NICE) 2018年9月)
URL: https://www.nice.org.uk/guidance/ng106/chapter/Recommendations#palliative-care
・「心不全終末期のための緩和アプローチ」
・治療検索:心不全
・心不全ガイドライン オーストラリア
終末期の心不全疾患の臨床経過を振り返ることで患者や家族のQOLを改善するには、緩和ケアチームの介入が有益であることは明白でしょう。
いつものことですが、あなたが特に興味ある分野で追加の情報が欲しい場合、次のアドレス
julie@palliativeeducation.com までメールにて連絡くだされば、必ず、次号にて取り上げます。
日本語でも結構です。皆様方から緩和ケアについての思い、経験について教えていただきたいです。
お互いに学び合えることがあると思っています。
次号でお会いするのを楽しみにしています。ごきげんよう、ジュリー
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