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症例103 前胸部痛を訴え救急受診した 81歳女性

女性/81歳

問題

【主訴】前胸部痛
【既往歴】胆石症
【習慣・嗜好歴】たばこ:never smoker、アルコール:機会飲酒
【現病歴】これまで胸痛発作を自覚したことはない。2時間前より右肩から前胸部にかけて疼痛が出現した。改善しないため救急要請し、当院救急外来に搬送された。
【来院時身体所見】脈拍92/分 整  血圧133/75mmHg 呼吸数26/分 体温36.4℃ SpO2 98%(room air)
 
1.心電図異常所見は?
2.診断は何か、また、病変はどこか。
 
受診時の心電図を示す。

(出題者)公益財団法人田附興風会医学研究所
 北野病院心臓センター 循環器内科主任部長 猪子森明

 

心電図① 受診時の心電図

心電図1 受診時の心電図

解答と解説

【解答】
1.I、aVLのST上昇、II,III,aVFのST低下
2.側壁のST上昇型急性心筋梗塞 冠動脈病変は対角枝
 
搬送時胸痛持続しており、ECGにてⅠaVLのST上昇、トロポニンI 0.255ng/ml(正常<0.045)、心エコーで前側壁に壁運動低下を認め、側壁の急性心筋梗塞と診断した。
緊急冠動脈造影の方針とし、ヘパリン3000単位静注を施行すると心室性期外収縮の頻発と非持続性心室頻拍が一過性に出現し、リドカイン50mgを静注後改善した。
その後の心電図(心電図2)でⅠaVLのST上昇が改善しており、再灌流を示唆する所見であった。
冠動脈造影では左冠動脈第一対角枝近位部に90%狭窄を認め、責任病変と考えられた(左冠動脈造影1,2)。
既に再灌流しており、血流も良好であったためPCIは施行せず終了とした。peakCKは381IU/L MB35IU/Lであった。
本症例では受診時の心電図でI,aVLのSTが上昇で著明で、II,III,aVFでも明らかなST低下を伴っているため見逃されることはなかったが、対角枝や鈍縁枝の閉塞による狭い領域の側壁梗塞においては、心電図の変化がI,aVLの軽微なST上昇のみの場合もあり注意が必要である。
 

心電図2

心電図2

 

左冠動脈造影1(左前斜位頭側像)

左冠動脈造影1(左前斜位頭側像)

左冠動脈造影2(右前斜位頭側像)

 左冠動脈造影2(右前斜位頭側像)

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