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症例82 前胸部の圧迫感

女性/73歳

問題

73歳の女性。数年前から運動には関係なく、前胸部が重い感じになり、徐々にその症状が頻回に起こるようになった。
また3年前から左頸部が腫れている様に感じると訴えていた。

 

73歳女性 心電図

解答と解説

【臨床経過】
2011年6月、大阪市淀川区保健福祉センターから「大動脈瘤」の診断で当クリニックへ紹介され受診された。
3年前から左の頸部の腫れを自覚したため、複数の病院で種々の検査を受けたが、確定診断には至らなかった。
某検診センターで取られたポータブルX線写真で明らかに大動脈弓の膨隆を認めた。視診により座位でも明らかに
左側外頚静脈の著明な怒張がみられ、明らかに鎖骨下動脈の動脈瘤によるものと考えられた。
また聴診上、左頸動脈の上部に血管雑音を聴取した。

 

(写真1 – 左頸部の外頸静脈が怒張して見える)

左頸部 外頸静脈写真

 2011年6月20日、初診患者として、髙階国際クリニックを受診した際の心電図は、第II誘導、胸部V5誘導のR波が其々、17mm, 32mmと増高し、
胸部誘導のV3〜V6まで、T波の2峰性及び陰性U波が見られたことは、明らかに左右心室筋の再分極が障害されており、左心室の拡張期負荷が掛かっていることを示している。
 

(問題の心電図 – 再掲)

問題の心電図

 上記の所見から「左室肥大」(拡張期負荷を伴う)と、左右心筋の再分極過程に異常があることから「広範囲心筋障害」と判断され、心臓外科的処置が必要と思われ、
淀川キリスト教病院に紹介した。淀川キリスト教病院・循環器外科から、国立循環器病研究センター心臓外科に転院し、緊急手術が必要と判断された。
2011年8月12日に大動脈弓部の動脈瘤を切除し、人工大動脈置換術が行われた。
 術後は、胸部圧迫感が取れたが、その後も頭部を急に左右に動かすと眩暈を起こす訴えが続いたため、2015年1月13日に撮影された左頸動脈エコー検査を行ったところ、左頸動脈上部に狭窄部分がみられた。
 

(写真2 – 左:左頸動脈上部の単純エコー 右:狭窄部前後の血流変化を示すカラーエコー図)

エコー画像2点 左:左頸動脈上部エコー図 右:狭窄部前後の血流変化を示すカラーエコー図

 この症例で学ぶべきことは、患者が最初に左頸部が腫れていると訴えていた点である。頸動脈に血管雑音があることが、検診センターで発見されたことは、重要なサインであり、当クリニックを受診した際にすでに、①「大動脈瘤」が診断されていたこと、②「左頸動脈狭窄」が存在していたこと、③心電図所見で「中等度左室肥大(拡張期負荷を伴う)」が見られたこと、④患者が頭部を急に左右に向けた時、必ず「眩暈」が起こっていることは「頸動脈狭窄部」がさらに強くなり、一時的に閉鎖を起こしたものと考えられ、その結果「一過性脳虚血」状態になったものと考えられる。
 今後の予後に関しては、できるだけ日常生活で急激な体位変換などを避け、静かに過ごす必要がある。現段階でも予断を許さない状態にあると考えられる。

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