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症例81 労作時息切れを主訴に来院

女性/57歳

問題

2年前より眼科にてぶどう膜炎を指摘され治療を受けている。労作時息切れを主訴に受診。
入院時の心電図は(1)であった。胸部レントゲンにてBHLを認めた。心臓MRIにて中隔が菲薄しており、PET検査にて集積を認めた。
心サルコイドーシスの臨床診断群と診断しプレドニン30㎎の内服加療を開始した。ステロイド内服開始3日目に心電図は(2)へと変化した。

 

(1)入院時心電図

入院時の心電図

 

(2)ステロイド投与後3日目

ステロイド投与後3日目

解答と解説

心電図診断:サルコイドーシスによる一過性完全房室ブロック
 
解説:
この症例は、入院する1か月前まで心電図ではⅠ度房室ブロックのみを認めていたが軸偏位は認めていなかった。心電図(1)に示すように、入院までの1か月の間に急激に病変が進行し、完全房室ブロックを呈した。補充調律は左脚ブロック型のwide QRSであり、His束以下の心室から出現している。幸いにプレドニンが著効し、プレドニン投与3日目の心電図(2)ではⅠ度房室ブロック(PR:336msec)に改善している。心筋の炎症性浮腫が改善したことにより伝導障害が改善したものと考えられる。
また、改善後の心電図ではⅡ・Ⅲ・aVf・V3-6で陰性T波が見られている。この陰性T波はプレドニン投与後12日目(心電図3)には陽転化した。

 

心電図(3)ステロイド投与12日目

心電図(3)ステロイド投与12日目

 このT波の陰転化は1982年にメモリー現象と命名された心電現象である(1)。これは脱分極異常が正常化した際に再分極異常であるT波の異常がしばらくの間持続する現象で臨床的にはペースメーカーリズムから洞調律への復帰時やPSVTの停止後、WPW症候群の副伝導路離断後や一過性脚ブロックの改善後に見られることがある。このメモリー現象の持続時間は原因となる脱分極異常の持続時間に比例すると言われており(2)、本症例では少なくとも1週間、このメモリー現象が観察された。
 このような症例で、ペースメーカーの植え込みを施行するかは悩ましいところであるが現在のところ、プレドニン維持量を継続することでPR時間は240msまで改善しておりペースメーカー植え込みは施行せずに慎重に経過観察している。
 
参考文献:
(1):Rosenbaum, et al. Am J Cardiol 1982;50:213-222.
(2):Zoghi, et al. Europace 2004 ; 6:418-424.
 

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