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心電図データベース

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症例78 しばしば失神発作を起こした52歳男性

男性/52歳

問題

52歳の男性会社員。平成18年7月14日に初診患者として当クリニックを受診。以前から時々眩暈を感じていたが、平成15年10月頃より、2-3秒意識を失って倒れたことが何度かある。
淀川キリスト教病院を受診し、ホルタ―心電図の結果、3.9秒の「心停止」が認められたと知らされた。その後、自覚症状もなく順調に経過していた。
当クリニックでの初診時の心電図、心エコー図は正常であった。暫く、診療が途絶えていたが、平成22年9月10日、再診時に撮られた心電図が (A) である

 

心電図 (A)

心電図 A

平成26年6月24日再診時、「その後は特に問題はなかった」 と本人が主張。平成26年7月26日の心電図は (B) の通り一変した。
 

心電図 (B)

心電図 B

解答と解説

問題(A)の心電図は、4年前の平成22年9月10日に撮られたものだが、一見して分かることは、全ての誘導でPQRSTは正常である。しかし、第I・II・III誘導に見られる心拍数の減少は、第2心拍から第3心拍の間で、遅い洞不整脈が見られた後、第3心拍から第4心拍の間は完全に脈拍が欠落し「2:1洞房ブロック」を示している。
PQRSが欠落したり房室接合部リズムにより、一過性の徐脈を伴う無症候性の房室ブロックは、子供や若年者、またトレーニングをしている運動選手に見られる現象である。この症例では、病歴によると以前から時々眩暈があり、受診1年前にも2~3秒間意識を失神している。副交感神経緊張が増大して洞結節と房室結節を抑制すると、持続性の心停止や失神発作を起こすことがある。また、胃カメラや気管支鏡、胸腔穿刺などの施行中にも洞房ブロックや洞停止を起こして失神することがある。
 
 本症例は会社で野球選手としてかなりの運動をしており、普段は全く無症状であることから、「迷走神経緊張の増大によって起こった2:1洞房ブロック」と診断できる。全ての誘導を通してPR間隔が0.22秒と延長しており、四肢誘導・胸部誘導ともにP波が2峰性になっているところから、「第I度房室ブロック」があり、左右心房にも障害がある可能性を見逃してはならない。しかし、第I度房室ブロックだけでは、失神を起こすことはない。
 

問題の心電図(A) - 再掲 –

問題の心電図(A)

問題(B)の心電図は平成26年7月26日に撮られたものであるが、患者は4年間正常に経過し、特に問題はなかった。平成26年7月5日、会社の健康診断で心電図異常を指摘され、当クリニックを再診した。本人は全く無症状であるが、どの誘導を見てもP波はなく、鋸歯状の「6:1あるいは4:1伝導の心房粗動」が見られる。1つの粗動波が次の波に移行し、殆ど基線が見られない。粗動波の間隔は250~350/分の間にある。
 これは通常2つの大静脈間の輪状組織に沿った右房内の回旋運動によって起こる。稀に左右何れかの心房内の発火頻度の高い一群のペースメーカー細胞によって起こってくることがある。
 
 (A)と(B)は同一症例であるが、過去4年の間、また少なくとも昨年の会社の健診で異常が発見されなかったことから、過去1年以内に「心房粗動」を起こしたものと考えられる。規則性が保たれているところから、無症状に経過したものと思われる。
 現在、治療法として心房内高周波アブレーションが最も有効であるが、心拍の早い例では、ワソランやジギタリス剤を静注する。一般に心房粗動は抗不整脈薬が奏功しにくく、Ic群薬、III群薬は比較的高い停止効果を示す。

 

問題の心電図(B) - 再掲 –

問題の心電図(B) - 再掲 -

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