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心電図データベース

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症例72 突然の動悸

男性/16歳

問題

当院に搬送される5時間ほど前(13-14時頃)、夏期講習で勉強していた時に、特に誘因なく動悸を自覚した。
他の医療機関でベラパミル5mgの静注を施行されたが改善せず(前後で心電図変化なし)当院へ搬送された。
3ヶ月ほど前に今回よりも軽い動悸発作を自覚したが、医療機関を受診した時には心電図異常を認められなかった。
既往歴:内服薬なし。健診で心電図異常を指摘されたことはなかった。
家族歴:心疾患、不整脈、突然死の家族歴なし。

 

16歳 男性 心電図

解答と解説

解説:
 以前の心電図でWPW症候群を指摘されていない点が疑問だが、不規則なwide QRS tachycardiaであり、不応期の短い心房-心室間の副伝導路(Kent束)が存在するWPW症候群の患者に、心房細動、心房粗動を合併した場合に出現する(いわゆる偽性心室拍;PseudoVT)。早期興奮を伴う心房細動においては、副伝導路の房室伝導が房室結節を経由する房室伝導を凌駕することによりQRS幅が延長するため、房室伝導を抑制する薬剤(ジギタリス、ベラパミル)は禁忌であり、心房筋の伝導抑制作用があるIa、Ic群抗不整脈薬が適応となる。
ただし血行動態が不安定な場合は速やかに電気的除細動を実施すべきである。本症例では血行動態が安定していたため、ピルジカイニド50mgを点滴静注にて投与開始したところ、速やかにQRSは正常化し心拍数が減少した。(ECG②)
 

ECG2 サンリズム静注後の心電図

 その後も心房細動が持続するため電気的除細動を施行したところ、Δ波を認める心電図に復帰した(ECG③の左側と同じ)。ハイリスク症例であるためアブレーション治療の適応と判断し、アブレーションによるKent束離断を行う方針とした。右そけい動脈~大動脈経由で左室にアブレーションカテーテルを挿入し、僧帽弁下の前側壁にKent束を確認し、15Wで焼灼開始したところ、約2秒でΔ波消失をみた。(ECG③)プロターノール負荷にても再伝導が出現しないことを確認し手術を終了した。
 

ECG③ アブレーションによりKent束離断に成功した瞬間の心電図変化


WPW症候群に心房細動を合併する割合は比較的高く、11.5-39%とされている。その理由として、①心室性期外収縮が起きた場合、Kent束を経由して心房が刺激されること、②房室回帰性頻拍から移行しやすいことがあげられている。Kent束の不応期が短い場合には心拍数は200/分以上に達し心室頻拍に類似した波形となり(偽性心室頻拍)、心室細動に移行して突然死に至る例もある。①心房細動時の最短R-R間隔≦220msec、あるいは、②Kent束の順行性不応期≦250msecの場合にはハイリスク症例とされており、アブレーションによるKent束離断術の適応である。心電図上のΔ波からはKent束の存在する部位を推定することが可能である。(図1)
 

画像


参考文献
Gallagher et al:The preexcitation syndromes. Prog Cardiovasc Dis 20:285,1978

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