心電図データベース
問題
現病歴:
健康診断で心電図にて心電図異常(図1-1)を指摘されていたが、眼前暗黒感や失神歴はなかった。2012年春、某日飲酒後、居間でくつろいでいる際に突然いびきをかき、椅子からくずれおちた。家人が呼びかけたが反応なく呼吸が停止していたため、心肺蘇生を行いながら救急要請した。約15分後に救急隊到着、意識レベルはJCS300、AEDにて心室細動(図2)でありDCを施行され自己心拍再開した。搬送時の心電図も完全右脚ブロックであった。搬送後に心臓超音波検査や冠動脈造影を施行したが、基礎心疾患は指摘できなかった。第15病日に、やや異なる心電図波形(図1-2)が記録された。
(出題者)大阪府立済生会富田林病院 院長 宮崎俊一 |
図1 健康診断時の心電図
図2 AED記録
解答と解説
解説:
過去の健康診断の心電図(図1-1)では完全右脚ブロックのみで、その他の異常は指摘できない。 この時点で心エコーや運動負荷検査などの心スクリーシングをしても後日生じた心肺停止のイベントを予見できなかったと思われる。
しかし、留意すべき点として突然死の家族歴があり、注意して頻回に心電図を繰り返して施行すれば図1-2のような特徴のある波形が記録できて事前に有効策をとれたかもしれない。
図1-1ではQRS幅は110msであるが、図1-2では、QRS幅は140msとなりQRS幅の拡大とV3誘導でJ点の2mmの上昇があり2型のBrugada型心電図を認める。Brugada症候群の症例では、心電図波形の日内・日差変動が大きく一回の心電図記録でBrugada型心電図が記録されなくても時間帯を変えて記録してみると特徴のある波形が捕らえられることがある。
その後、ピルジカイニド負荷(図3)を行ったところさらにJ点の上昇を認めた。
心肺停止蘇生後でType2のBrugada型心電図が記録されており、ピルジカイニド負荷にてより顕著な心電図変化を認めた。植込み型除細動器の植込みの適応であり、植込み術後(図4)に退院となり社会復帰した。
図3 図4