心電図データベース
問題
75歳女性、主婦。43歳の時、人間ドックで心電図異常を指摘されたが、要観察ということになった。
46歳の子宮筋腫の手術を受けた際、冠不全の疑いがあると言われ、47歳の健診で心筋梗塞の疑いが
あると指摘された。48歳の夏、夕方休憩中「胸に棒を差し込まれたような痛み」が起こったが、
すぐに痛みが治まったので普通に生活を続けていた。5年前、当クリニックで記録された心電図である。
(出題者)元髙階国際クリニック院長 公益社団法人臨床心臓病学教育研究会 理事長 髙階經和 |
心電図
解答と解説
解答: 心サルコイドーシスによる心電図変化
解説:
当クリニックを紹介により受診する前に、某病院循環器科で「下壁心筋梗塞」あるいは「心筋症の疑い」があると指摘されていた。当クリニック受診時の診察所見は、身長148cm、体重47kg、上腕円周23cm、心拍数75回/分、血圧(右) 134/80mmHg、(左) 124/78mmHgであり、呼吸音も正常であったが、心音も特に異常ではなかった。心電図はその後も変化が見られなかったが、53歳の時、家族と高松へ旅行中、宿泊先で心停止を起こし、直ちに病院に搬送され蘇生した。
2003年12月5日に当クリニックで行った、心エコー図検査(下図)では左室拡張が著しく、心室中隔の菲薄化(5mm)が進んでいた。その後の心エコー図でも変わりは見られなかった。
心エコー検査図
その後、某病院循環器科を受診した際、待合室で2回目の心停止を起こしたため緊急入院した。
入院中に行った心生検では異常が見られず、ICD挿入術が行われて退院したが、2度目に行った心生検で「心サルコイドーシス」であることが判明した。その後、ステロイド療法を行っていたが、75歳の冬、多発性心室期外収縮を起こし、心室頻拍に移行したため、上記の病院に搬送されたが、蘇生せず他界した。