心電図データベース
問題
心電図
解答と解説
四肢標準誘導では、T波のあとにU波が出るタイミングでP波が記録されている。PQ間隔は、0.512秒と著明に延長している。胸部誘導では、II 度房室ブロックを呈している。ホルター心電図では、I 度からWenckebach型房室ブロックを認め、心室性期外収縮が2個/日、上室性期外収縮が5個/日それぞれ記録されていたが、房室ブロックや期外収縮による自覚症状はなかった。また、心エコー図検査では、明らかな器質的心疾患は認めなかった。
I 度房室ブロックでも、まれに高度の房室ブロックに進行することがあるが、若年者にみられるものは、副交感神経の緊張によるもので良性と考えられ、心臓電気生理学的検査(房室結節内・His束それ以下のいずれの部位でブロックをきたしているかを判定する)が適応になることはない。
房室ブロックの治療においては臨床症状が最も重要とされており、高度な房室ブロックをきたしたとしても症状が全く無ければ治療が行われないこともある。逆に、I 度房室ブロック或いはWenckebach型房室ブロックであったとしても、ふらつきや脱力感などの症状が認められれば治療の対象となる。
II 度房室ブロックは、心房刺激の心室への伝導が間歇的に欠落しているものであり、さらに、Mobitz I 型(Wenckebach型と同義)とMobitz II 型に分類される。 Wenckebach型房室ブロックの型では、心房刺激の心室への伝導が欠落するまで房室伝導の遅延度が増加する。欠落した調律のうち、房室伝導は回復し、同様の過程を繰返す。この房室ブロックでは、通常は房室結節の伝導障害であり、I 度房室ブロックのように良性である可能性もあり、副交感神経緊張の亢進によることが多い。
Wenckebach型とMobitz II 型の II 度房室ブロックの比較
WENCKEBACH型 | MOBITZ II 型 | |
房室ブロック | 房室ブロック | |
ブロック部位 | 房室結節内 | His束またはそれ以下 |
原因 | 迷走神経緊張による | 虚血や炎症による変性・線維化 |
増悪因子 | β遮断薬の投与 | I 群抗不整脈の投与 |
失神発作 | まれ | しばしば |
補充収縮 | QRS幅の狭い心室波 | QRS幅の広い心室波 |
予後 | 良好 | 徐々に悪化 |