心電図データベース
問題
心電図
解答と解説
本症例では上の診断基準のうち2〔わずかな変化であるがR wave progressionの逆転がある(RV1>RV2)、3(V1、V2において)、4(V4において。ただし2009年10月4日の心電図にもV4にlate notchがあるが、2010年3月30日の心電図のV4ではS波が小さくなり、相対的にnotchが大きくなっている)を満たす。
また、典型的な完全左脚ブロックでは中隔の興奮が右から左へ起こるので、右胸部誘導では2009年10月4日の心電図のようにR波がないが、2010年3月20日の心電図ではR波が出現している。これは中隔を含む心筋梗塞のため中隔の興奮が起こらず、その結果右室の興奮がunmaskされR波が出現したものと考えられる。このことを示すもっと典型的な例ではI、V5、V6にQ波が出現する。以上よりこの心電図は心筋梗塞を強く疑わせる。心臓カテーテル検査を行うと左室造影にて前壁から心尖部および中隔部のdyskinesisがあり、冠動脈造影にて2枝病変〔右冠動脈#1:90%(下図矢印)、左冠動脈#6:90%(上図矢印)〕があった。すなわち、この例のように注意深く心電図を見ると完全左脚ブロック存在下でも心筋梗塞の診断が可能な場合がある。
冠動脈造影図