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心電図データベース

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症例20 突然の動悸と胸部不快感にて覚醒

女性/75歳

問題

突然の動悸と胸部不快感にて覚醒。症状が持続するため、当院救急外来へ搬送。
高血圧、頻脈発作、脂質異常症にて通院治療歴がある。午前1時頃、突然の動悸と胸部不快感にて覚醒。
症状が持続するため、当院救急外来へ搬送。血圧は137/77、脈拍110/分、不整。その時にとられた心電図を示す。

 

心電図

心電図

解答と解説

【解答】
WPW症候群、心房細動による頻脈である。
 
【解説】
幅の広いQRSによる頻拍は、一見心室頻拍に似ているため、偽性心室性頻拍(pseudoventricular tachycardia)とも呼ばれる。
しかし、心室頻拍ではR-R間隔は規則正しいが、この症例ではR-R間隔は不規則であり、心室頻拍とは明らかに区別される。幅の広いQRS 波の間にQRS幅の狭い正常の房室伝導をした波形が混じっている。
WPW症候群では、デルタ波とそれに続く幅の広いQRS波とSTT異常を認めるが、これは正常の房室伝導を介するQRS波と、WPW症候群に特徴的な副伝導路(ケント束)を介したQRS幅の広い房室伝導波が様々に融合したQRS波形を見ているのである。
この症例のように、心房細動の頻脈発作時には、より不応期の短い副伝導路を介した房室伝導波が優勢となり、QRS波の幅は広くなる。特にこの症例では、房室伝導を抑制するため通常は禁忌とされているベラパミル(ワソラン)がある理由で処方されていた。そのため、このような発作を誘発したものと考えられる。
一方、抗不整脈薬などで、副伝導路の伝導を抑制すると、デルタ波や幅の広いQRS波は消失し、正常の房室伝導による波形となる。
この症例では、ベラパミルを中止し、Naチャンネル遮断薬である塩酸ピルジカイニド(サンリズム)が投与された。結果、QRS幅は正常化し、心房細動と正常の房室伝導のみの波形となった(心電図2)。
さらに、その後、心電図は正常洞調律に復するとともに、特徴的ないつものデルタ波を含む幅の広いQRS波(心電図3)に戻った。

 

心電図2(治療後 経過1)

3年後の心電図

 

心電図3(治療後 経過2)

3年後の心電図

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