心電図データベース
問題
(出題者)公益社団法人臨床心臓病学教育研究会 会長
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心電図
解答と解説
解答:
ブルガダ症候群(Brugada syndrome)による失神発作、心室細動の可能性
解説:
ブルガダ症候群は、一見正常な人におこる突然死の原因の一つで、多くの場合、心室細動で死亡する。
我が国で“ぽっくり病”といわれてきたものではないかと考えられている。頻度は0.1~1%程度、男性に多く、
平均年齢は50歳。特徴的な心電図(図2)に加え、失神発作や心室性頻脈、突然死(45歳以下)の家族歴、
夜間の呼吸困難などの臨床所見があれば診断される。常染色体優性遺伝の形式をとり、飲酒や自律神経失調、
抗不整脈薬、抗うつ薬で誘発される。
図2 ブルガダ症候群 心電図
図2で示す1型(type1)はブルガダ症候群に特徴的で、上記の臨床所見の合併があれば診断は確定される。
右脚ブロックに似た形とST上昇がV1-3で記録されている。
心電図2型(type 2)、3型(type 3)は一般の正常人でも見られることがあるので、Naチャンネル遮断薬を負荷することで1型への移行があり、さらに上記の失神発作などの臨床所見の合併があれば診断が確定する。
これらの心電図変化は一時的なもので、心電図をとる状況により1型~3型まで変化する。
従ってブルガダ症候群が疑われれば、V1~3誘導の心電図を1肋間上に上げて記録、あるいは薬剤負荷が行われる。
ブルガダ症候群は重篤な予後をとることが多いので、可能性が疑われれば専門の医療機関に入院の上、確定診断をし、体内植え込み型除細動器(ICD;implantable cardioverter defibrillator)による治療が必要である。
この患者では、特徴的な心電図と失神発作、さらに救急室で誘導を一肋間上に上げて記録することで、ブルガダ症候群の心電図がより特徴的になった(図3)。
図3
翌日の心電図(図4)では、特徴的な所見は消失し、図2のtype 2を示している。
図4
診断が確定されたためICD植込み目的にて大阪医科大学付属病院へ転院した。 ICD植込み時に行われた電気生理学的検査にて心室細動が誘発され(図5)、電気的除細動にて元の状態に戻った(図6)
(図5、図6は大阪医科大学第三内科梅田達也先生から提供されたものである)
図5
図6