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症例107 動悸発作で来院した 25歳女性

女性/25歳

問題

【主訴】動悸
【現病歴】
6年前から突然起こり、突然停止する、持続が10分程度の動悸発作が数回あった。本日、同様の動悸発作が出現したが、90分以上持続したため当院救急外来を受診した。
救急外来での心電図(図1)と発作停止後の心電図(図2)を示す。
診断は何か?

出題:猪子 森明(田附興風会医学研究所北野病院 心臓センター)

【図1 動悸発作時の心電図】

【図2 発作停止後の心電図】

解答

症例107
動悸発作で来院した 25歳女性

【解答】 発作性上室性頻拍(房室結節回帰性頻拍AVNRT)
 本例は規則正しいリズムの正常QRS幅の頻脈(narrow QRS tachycardia)であるが、洞調律と同じP波が認められないこと、心房粗動の際にみられる粗動波(F波)がみられないこと、よく見るとQRSの後ろに逆行性P波が認められることから発作性上室性頻拍と診断した。本例の逆行性P波は、aVR誘導のr波とI、V1誘導のr’波、II、III、aVF誘導のs波の様に認められ、房室結節回帰性頻拍(AVNRT)に特徴的な所見を示している。、発作時の停止にアデノシン静注(一過性に房室ブロックを起こす)が有効であったことも発作性上室性頻拍を示唆する所見であった。その後、心臓電気生理学的検査でAVNRTと確定診断され遅伝導路のアブレーションを施行することによって根治できた。
 発作性上室性頻拍には房室回帰性頻拍(AVRT)とAVNRTが含まれるが、その心電図診断において逆行性P波を発見することが重要である。発作性上室性頻拍では一般的にはR-P時間がR-R時間の半分以下(shortRP)で、洞調律のP波と異なる軸をもつP波となっている。AVRTにおけるP波は副伝導路(Kent束)の部位によって異なるが、AVNRTにおけるP波は房室結節から逆行性に伝播するため、II,III,aVF誘導で陰性P波、V1誘導で幅の狭い陽性P波、I,aVR,aVLで軸は一定ではないが幅の狭いP波となる。
 上記以外に本症例で特徴的なのは、頻脈発作時の心電図で一拍ごとにI,V2-5誘導のQRS電位の変化とaVL誘導のr波の出現する所見で、電気的交互脈(electrical alternans)として知られる所見である。narrow QRS tachycardiaのQRS波形における電気的交互脈はリエントリ―性の頻拍を示す所見であるが、AVRTのみならずAVNRTにおいても認められ、AVRTにおいては副伝導路(Kent束)の、AVNRTにおいては房室結節内伝導路の、伝導や不応期が交代性に変化するためと考えられている。電気的交互脈には、本例におけるような伝導や不応期の変化による電気的交互脈(P、QRSの波形や持続時間、PQ時間やRR時間の交代性変化)以外に、再分極の変化による電気的交互脈(ST変化、Tの波形や持続時間の交代性変化)や心タンポナーデ時に認められる心臓の位置の変化による電気的交互脈が報告されている。

参考文献

1.Ganz LI; UpToDate Clinical manifestations, diagnosis, and evaluation of narrow QRS complex tachycardias. Last update:Sep 28, 2016
2.Grauer K; ECG Pocket Brain expanded edition 6th edition 2014, e-pub, Section 14.0 Electrical Alternans (https://www.dropbox.com/s/7lxzzx05ua452mp/14.0-%20ECG-2014-e-PUB-Electrical%20Alternans-%2810-21.1-2014%29-LOCK.pdf?dl=0) 

 

出題: 猪子 森明(田附興風会医学研究所北野病院 心臓センター)

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