心電図データベース
問題
主訴:無症状(不整脈精査希望)
現病歴:
201●年4月、大学の検診で記録した心電図で異常を指摘された。動悸などの症状は全くない。
精査を勧められ、近医を受診したところ、頻発する異常QRS波形を認められ、同年5月、当院を紹介された。
日頃からスポーツに励み、生活に制限はない。
既往歴:特になし(出題者)
生活歴:飲酒(-) 喫煙(-)
家族歴:特記すべきことなし
理学所見 異常なし。胸部レントゲン写真 異常なし。心臓エコー検査 異常なし。
(出題者)近畿大学病院 心臓血管センター教授 栗田隆志
【図1】前医で記録された12誘導心電図
【図2】Ⅱ誘導での連続心電図
解答と解説
診断:心室副収縮 (ventricular para-systole)
一見すると心室期外収縮のようであるが、異常収縮(Wide QRS)の連結期(先行する洞調律QRSからWide QRSまでの間隔)が不定である。
また、比較的長いRR間隔で同じWide QRS波形が連続して認められる。このような場合は副収縮を疑う必要がある。
図2はII誘導だけを取り出した連続記録であり、変動する連結期を青矢印、洞調律のP波を赤矢印、推定される副収縮の興奮周期を赤矢印で示す。
洞調律時のST部分やT波の時相では心室の不応期に相当するため、副収縮起源からの興奮はQRSを形成することが出来ない。
タイミングによっては洞調律との融合波形を呈している。QRS波形は左脚ブロックパターンを示し、右室起源が疑われる。
このように独立した周期(洞周期よりも長い)を持った副収縮が発生するためには、その起源に一方向性ブロック(副収縮の起源に対して外から興奮は侵入できないが、内からは外へ伝導できる特性)を想定せねばならない。
ホルター心電図記録などで副収縮がR on Tのタイミングで発生していなければ心室副収縮の予後は良好と考えられる。本症例は全く症状がないため、無治療で経過を観察している。
【図1】前医で記録された12誘導心電図
【図2】Ⅱ誘導での連続心電図