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S3・S4の聴き方と、その臨床的意義

メディカル・エッセイ 

S3・S4の聴き方と、その臨床的意義

                  ジェックス理事長  髙階經和

はじめに:

「聴診器の時代は終わった」と勝ち誇ったようにうそぶくドクターもいますが、わたしはそう思いません。多分、そのドクターは聴診器を使わずに患者さんを診察するため、心エコー図が全てだと信じ込んでいるからでしょう。

余談はさておき、聴診器は皆さんお持ちですね。でも毎日自分の心臓の音を聴いて「S1・S2は全く正常で今日も体調はよい」と健康管理を行っている方は、どれくらいおられるでしょうか?因みにわたしは毎朝起きると自分の心音を聴きます。残念なことに正常S1.S2と軽い血流性雑音が大動脈弁部位、肺動脈弁部位、三尖弁部位、と僧帽弁部位に聴くことができます。しかし、S3(拡張早期に心房から心室へ血液は急速に流れ込む時の音)・S4 (拡張後期に起こる心房収縮音)は未だに聴かれません。多くの高齢者の方に聴かれる正常範囲の聴診所見です。恐らくこんな習慣を持っている人はあまりいないだろうと思っています。血流性雑音といったのは、ヘモグロビンが11.3g/mlで軽度の貧血があるからです。

S3.S4の臨床的意義:

 このS3やS4 は、まったく健康な若い人にも聴かれるのです。特にスポーツマンや、妊娠中の女性、貧血、時には甲状腺機能亢進症の方々の場合は、全身の循環血流が増加しているからで、生理的な現象であると考えられます。ですから30歳代までは30%聴かれるというので「30/30」という言葉が使われるようになりました。

 しかし、中高年の心疾患を持っている殆どの患者さんは、心不全を起こす可能性、あるいは心不全になっている可能性がありますから要注意です。循環器専門のドクターの診療をうけて心臓の働きが良くなれば、S3の音量も減少し、全く聴こえなくなってしまうことがあります。やや専門的になりますが、聴診すると心臓弁膜症(大動脈弁や僧帽弁閉鎖不全)の場合は、S3を下のイラストに示す様に心尖部で最も良く聴くことができます。S4の場合も同様です。この心音を私たちは「S3ギャロップ」・「S4ギャロップ」と呼んでいます。

聴診する時の姿勢:

 S3やS4 の様な低い周波数の心音は、右下の図の様に周波数が低く(20­Hz~60Hz)そのためため聴きにくいのです。ちなみに人の会話は400Hz~700Hz程度の周波数です。


                  

S3やS4を聴診する際は患者さんに左側臥位を取ってもらい、耳を澄まして聴くと、S3は「ツ ト 」、S4ッタ」と聴こえます

 

S4の臨床的意義:

 この様に耳に聴こえるS4は左心室の筋肉が硬くなり、進展性が低下した場合と、心房の収縮力が強いことを意味します。成人で左心室の伸展性が低下する状況とは「全身性高血圧」「虚血性心疾患」「弁膜性心疾患」と「心筋症」が挙げられます。一般には高齢者では特に心臓病でなくてもS4が聴かれるものです。

 S3・S4が息を吸い込んだ時に大きく聴こえるのは、左側胸骨縁下部で右心室から起こったものです。心拍数が速くなりS3・S4が重なって聴こえる時は「サメ―ション・ギャロップ」と呼ばれ、拡張中期に大きく聴こえます。これは明らかに心不全の心臓であることが分かります。

まとめ:

 このように聴診器だけでも、色々な心臓病の診断をつける事が出来るのです。聴診もしないで心エコー図を撮るドクターは、ベッドサイド診察の基本手技をまだ身に付けていないからだろうと思います。皆さん「S3は拡張早期に心房から心室に急速に血液が流れ込む時に出る音(ナットク)で、S4は拡張後期に心房が収縮した時に出る音(ワカッタ)と覚えて下さい。

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