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心電図データベース

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症例83 持続する頻拍発作にて救急外来を受診

女性/18歳

問題

中学1年の時に頻脈性不整脈を指摘され、拡張型心筋症と診断され内服加療が開始された。
その後症状はなく、内服薬処方(エナラプリル2.5mg、ビソプロロール2.5mg/日)を断続的に内服していた。
最近動悸を自覚することが多くなり、以前受診した病院を一ヶ月前に受診したが心エコーは以前と著変なく
(左室拡張期径50mm 左室駆出率33%)血液検査でもNT-pro BNPが244と軽度上昇を認めるのみで、心不全は認めず洞性頻脈を疑われた。
半月前から動悸に加えて嘔気・嘔吐、全身倦怠感、心窩部痛出現し、近医受診したが改善せず当院救急外来受診した。血液検査でNT-pro BNP4400、心エコーで左室拡張期径は52mm左室駆出率15%で、心不全増悪と診断され入院加療の方針となった。
入院時の心電図(A)と動悸自覚時の心電図(B)を示す。

(出題者)公益財団法人田附興風会医学研究所
 北野病院心臓センター 循環器内科主任部長 猪子森明

 

(A)入院時心電図

18歳女性 入院時の心電図

(B)動悸自覚時の心電図

18歳女性 動悸自覚時の心電図

解答と解説

【回答】
上室性頻拍
 
心電図(A)では170bpmのP波を認め、Wenckebach型の房室ブロックを伴って3:2伝導となり114bpmの頻拍を呈している。
P波はII,aVF誘導では陽性であるが、I誘導で陰性で異所性心房調律であることがわかる。動悸時には1:1伝導となり224bpmの頻拍となっている。
本症例では心機能低下が著明であったため、入院後はβ遮断薬で頻拍のコントロールを行いつつカテコラミン持続点滴と利尿剤で加療された。
上室性頻拍は持続性で、心不全改善後に実施したホルター心電図では夜間に100bpm程度に心拍数は低下するものの、日中は120-160bpmの頻拍が持続していることが示されている。
 

ホルター心電図

電気的除細動を実施したが、一瞬洞調律に復するもすぐに上室性頻拍に移行した。心臓電気生理学的検査を行ったところ、最早期興奮部位は
左心耳基部に認められた。最早期興奮部位を高周波通電することによって上室性頻拍を抑制でき、β遮断薬の内服で洞調律を維持可能となった
(心電図(C)I誘導でP波が陽性になっている)。本症例は心拍数コントロールによって左室収縮力も徐々に改善し心筋生検でも心筋の線維化は
軽度であったことから、若年時より持続した上室性頻拍によって慢性的に経過した頻拍誘発性心筋症が急性増悪を来した症例と考えられた。
 

(C)洞調律の心電図

洞調律の心電図

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