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心電図データベース

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症例77 動悸と浮腫を主訴に近医より紹介来院

男性/80歳

問題

80歳男性。動悸と浮腫を主訴に近医より紹介来院。10年前にWPW症候群に対して大学病院でカテーテルアブレーションが行われており、それ以来、ワソラン6T/日の内服を継続している。
紹介医より完全房室ブロックの疑いにて救急外来に紹介され来院。心電図が記録された。

(出題者)公益社団法人臨床心臓病学教育研究会 会長
社会医療法人仙養会北摂総合病院 理事長 木野昌也

 

心電図

解答と解説

診断:洞徐脈、房室解離、洞不全症候群
 
不整脈の心電図をみるポイントは、まず(1)P波を探すことである。P波はST部分やT波、あるいはQRS波に重なっていることがある。そこでST、T、QRS波形を見る時、微妙な変化を見落とさないように注意する。
救急外来で記録された心電図を見直すと、最下段、第Ⅱ誘導における心電図波形で、P波は矢印で示された部位に同定することができる。(2)次いで、P-QRS-Tが順番に出現しているかを確認する。すると、第1心拍では、P波はQRS波に合体し埋もれている。このP波はQRSに繋がっているとは考え難い。第2心拍をみると、P波はQRSの後に記録され、第3心拍では、T波に埋もれている。このP波は次に記録されたQRSに繋がっているように見える。第4拍目のP波はQRS内に消失している。
 

問題の心電図(再掲)

問題の心電図

第5拍目のP波はT波に重なり、このP波は次のQRSに繋がっている。第6拍目のP波は第1拍目のP波と同様にQRSに合体して記録されている。
この心電図は房室ブロックではなく、洞徐脈(36/分)でP波のレートがあまりに遅いため、上位の洞結節や心房からの伝導を待ちきれず、房室接合部に存在する下位中枢の房室結節から補充収縮が出ているのである。その現象が続いて起こっているために起こる調律で補充調律と呼ぶ。房室接合部からのレートは40/分とP波のレート(36/分)より僅かに速い。
心房の調律と房室結節の調律が解離し、互いに関係なくバラバラに興奮しているため、房室解離と呼ぶ。房室解離では、心電図を長く記録すると、ほとんどの場合、どこかで上位の中枢からの伝導が房室結節に伝わり正常伝導がみられる。この心電図では、第4と第7番目のQRS波がそれに当たる。
一方、房室ブロックとは、刺激伝導系の器質的な障害により電気の興奮が房室接合部でブロックされるため、上位中枢からの興奮が心室に伝わらない状態である。そのため、一般には房室ブロックではP波のレートがQRSのレートより速い。一方、房室解離ではP波はQRS波のレートより遅い。房室解離と房室ブロックの違いをよく理解する必要がある。
24時間ホルター心電図をみると、洞頻脈や洞房ブロック、洞停止、補充調律などが記録されている。臨床的には洞不全症候群と診断される。
 

24時間 ホルター心電図

ホルター心電図1  

24時間 ホルター心電図

ホルター心電図2

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