心電図データベース
問題
化膿性脊椎炎に対して一ヶ月前まで入院加療を受けており、リハビリテーション目的に転院された。
リハビリ後に突然気分不良、胸痛が出現し、収縮期血圧60mmHg台、SpO2 60%台まで低下した。輸液、酸素投与され当院に救急搬送された。
解答と解説
肺血栓塞栓症
解説
ADLの低下した方が、リハビリ中に胸痛とともに血圧の低下、SpO2の低下を来したということから、まず下肢深部静脈血栓症に起因する肺血栓塞栓症を考慮する必要がある。本症例では、胸部造影CTを施行し、両側肺動脈に血栓を認め、肺血栓塞栓症と診断した。(図1, 2)
図1
図2
肺塞栓症における心電図変化は右房、右室の拡大が起こること、それに伴って心臓が時計方向回旋を来たすことにより、V1-3誘導でR波減高、III誘導、aVF誘導でQ波が出現、I誘導でS波が出現する。また、前胸部誘導で陰性T波を認めることも多い。本症例でも、発症2ヶ月前の心電図(図3)と比較して、I誘導のS波、V1-3誘導のR波減高と陰性T波が出現しており、肺塞栓症に典型的な変化といえる。ただし、このような変化は虚血性心疾患における心電図変化に類似する場合があり、本症例でも発症3日目の心電図(図4)では虚血性心疾患を想起させる心電図となっている。前胸部誘導においてR波減高と陰性T波を認める際には、虚血性心疾患だけでなく肺塞栓症の存在に注意が必要である。
図3 (発症2ヶ月前の心電図)
図4 (発症3日目の心電図)