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心電図データベース

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症例50 高血圧と腎機能の増悪にて入院

男性/76歳

問題

高血圧と腎機能の増悪にて入院。
血圧: 200/84mmHg, 脈拍: 64bpm (不整:心房細動), 血清クレアチニン: 3.7mg/dl, 血清K: 5.1 mEq/l
腎血流ドプラにて左腎動脈狭窄を確認したためACE阻害薬を投与。
2日後には血圧 138/60mmHgと降圧した。以下にそのときの心電図を示す。

(出題者)大阪大学大学院医学系研究科 保健学専攻教授 神出 計

 

心電図

心電図

解答と解説

 本症例は高血圧と腎機能の増悪にて入院となった片側腎動脈狭窄の症例です。ACE阻害薬投与後、血圧は早期に非常に良く低下しています。心電図はテント状T波(T波の増高)を示しており、このときの血清K 6.1 mEq/lと高カリウム血症を呈していました。図1にACE阻害薬投与前後の心電図を示します。

(出題者)大阪大学大学院医学系研究科 保健学専攻教授 神出 計

心電図の比較

心電図 ACE阻害薬投与前後の比較

 

 図2は本症例のMRAですが、左腎動脈に高度狭窄を認めています。右腎動脈には狭窄はありませんが、図3に示したレノグラムでは右腎はほぼ無機能であり、本症例は片腎の腎動脈狭窄症例にACE阻害薬を投与していることになり、ACE阻害薬による急性腎不全、高カリウム血症を呈した例です。右腎無機能の原因は過去に起こした心房細動による全身血栓症が考えられました。

 

図2-MRA、図3-レノグラム

図2-MRA、図3-レノグラム

 

 本症例は特殊な腎動脈狭窄の症例ですが、本症例のようにすでに高度な腎機能障害がある場合にACE阻害薬やARBといったレニン・アンジオテンシン系阻害薬を投与する場合は少量から開始し、十分に腎機能、カリウム値をモニターしながら慎重に投与する必要があります。

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