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心電図データベース

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症例32 倦怠感、ふらつき

女性/80歳

問題

【既往歴】40年前より高血圧。コントロール良好。
【現病歴】80歳女性。2日前より倦怠感と起立時のふらつきが出現。
     心電図はII誘導のみで調律を示す。
 
【問1】この心電図の診断は?
【問2】上の診断にも拘わらずQRS幅が広くない理由は?
【問3】PP間隔が少し不規則である。不規則性に法則性はあるか?
【問4】上記が起こる機序は?

 

心電図

心電図

解答と解説

【問1】
解答:完全房室ブロック
解説:P波とQRS波との間になんら関連はなく、PP間隔は約0.96秒、RR間隔は1.64秒であり、心房の頻度が心室の頻度よりも多い。すなわち完全房室ブロックを示している。
 
【問2】
解説:この心電図のQRS幅は0.08秒と狭く、心室の調律は房室接合部補充調律であることが考えられ、したがってブロックの解剖学的位置はHis束を含めてその中枢側にあることが想像される。実際にHis束心電図を記録してみるとHis束内ブロックであることが証明された。この例とは逆にQRS幅が広い場合はHis束より末梢のブロックか、またはHis束より中枢側のブロックに一側性の脚ブロックが共存するときである。
 
【問3】
解説:PP間隔に不整がある。そしてQRS波が間にあるPP間隔はQRS波がないものに比べて短いという法則性が見付かる。この様な不整脈をventriculophasic sinus arrhythmia(室因性洞性不整脈)といい、完全房室ブロックの約30~40%に、また第2度房室ブロックでもやや稀に起こることが知られている。
 
【問4】
解説:この機序としていろいろ提唱されているが、心室収縮期に房室弁が閉じるため心房内圧が上昇し、Bainbridge反射を引き起こし、その結果副交感神経が抑制され洞房結節の脱分極頻度が多くなるという説が有力のようである。
 
文献:
Skanes AC, Tang AS. Ventriculophasic modulation of atrioventricular nodal conduction in humans. Circulation. 1998; 97: 2245-51.

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