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心電図データベース

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症例30 胸痛発作後に完全左脚ブロックを呈した高齢女性

女性/84歳

問題

高血圧症と高コレステロール血症を有する冠動脈疾患のハイリスク患者。
午前2時ごろに前胸部に不快感が出現。ニトログリセリンを午前2時と午前3時30分の2回舌下。
狭心症様症状は消失したが、心配になり当院を受診され心電図を記録。

 

心電図

心電図

解答と解説

・左脚ブロックの心電図所見:四肢標準誘導のI誘導・aVL誘導でq波が欠如し、胸部誘導のV1・V2誘導で小さいr波と幅広く深いS波を、V5・V6誘導で上向きのQRS波でR波は幅広く分裂または結節を認める。
QRS時間は0.12秒以上で完全左脚ブロックと診断。
 
・今回提示した症例は、半年前の心電図(図1)所見は正常範囲。胸痛発作出現後の心電図で完全左脚ブロックを呈しています。左脚ブロックは、心筋梗塞や心サルコイドーシスなど基礎心疾患を有している場合が多く、心エコー図、冠動脈造影と電気生理学的検査を施行。冠動脈造影では有意狭窄を認めず、電気生理学的検査も左脚ブロック以外の所見を認めず、幸いにも器質的心疾患を有しない完全左脚ブロック症例と診断した。
 

図1 半年前の心電図

半年前の心電図

 
・左脚ブロックを呈する症例は虚血性心疾患、強度な大動脈弁石灰化や左室肥大を伴う高血圧性心疾患など心筋障害が左室全体に広範囲に生じるような疾患を基礎とする症例が多い。Fahyらの疫学調査によると、左脚ブロックは0.1%に認められ男性の高齢者に多かった。約9年の観察期間中に、左脚ブロックを有する群では急性心筋梗塞や突然死が多く認められた。
この結果より、左脚ブロックが潜在的な器質的心疾患の指標となり得ることを指摘されている。
 
【文献】
 Fahy GJ, et al.: Natural history of isolated bundle branch block. Am J Cardiol 77:1185-1190,1996

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