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心電図データベース

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症例29 安静時の胸痛、動悸

女性/66歳

問題

症例は66歳女性で、主訴は2日前からの安静時の胸痛、動悸があり病院に来られた時の心電図です。これだけの情報と心電図からあなたは何を考えますか?

(出題者)元髙階国際クリニック院長
公益社団法人臨床心臓病学教育研究会 理事長 髙階經和

 

心電図

心電図

解答と解説

 心電図は洞調律で心拍数は65/分, II誘導にsmall Q, V1 tall R, V1-4 poor progression of R, I, II, aVL, V2-6にnegative T & QTprolongation があります。
 この時点ではACSまたはタコつぼ型心筋障害が疑われて緊急CAG+LVGが施行されました。CAGではRCA dominant, 有意狭窄なし。LVGでは3Akinesis, 他はhyperkinetic.ということでたこつぼ型心筋症にcompatibleな所見でした。血行動態は安定しており、IABPなどのデバイスやカテコラミン使用なしに状態は安定しました。  この後の心電図変化(2日後、2か月後)を供覧します。3日後には心エコーで左室壁運動の改善を認めました。
 

2日後の心電図

2日後の心電図

2ヶ月後の心電図

2ヶ月後の心電図

 
たこつぼ型心筋障害は
1)急性心筋梗塞に類似した胸部症状および心電図変化を有するが
2)冠動脈造影上閉塞病変をみとめず、
3)急性期には左室心尖部を中心とした領域の低収縮と心基部の過剰収縮を呈し、かつ
4)低収縮領域は冠動脈一枝の領域を越えて広く存在し
5)その心収縮異常は数日の経過で劇的に改善する症候群として1990年に報告されている。
発症平均年齢は67±13歳女性比86%と高齢女性に好発する。
また胸部症状は急性心筋梗塞に類似するが症状が激烈であることはまれである。
(日本内科学雑誌 内科100年のあゆみより)
 
【備考】
 今回とりあげました「タコつぼ心筋症(タコつぼ型心筋障害)」を報告され、また名付け親でもある佐藤光先生は大学出たての小生を指導していただいた恩師で、今でもお手紙や論文の別冊など送って下さいます。
ですので、特別な思いでこのコーナーで取り上げさせてもらいました。
 また、この疾患の自験例がないので、先輩でもありよき親友でもある、淀川キリスト教病院循環器部長の栗本泰行先生に症例をお借りしました。感謝いたします。

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