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症例112 心電図異常の精査目的にて紹介来院した 63歳女性

女性/63歳

問題

症例112
心電図異常の精査目的にて紹介来院した63歳女性

年前に橋本氏病による甲状腺機能低下症、高脂血症と診断され、現在自宅近くの診療所で治療中である。本年の5月、特定健診時に心電図異常を指摘。自覚症状はないが精査目的にて紹介来院した。その時の心電図を下記に示す。

(出題者)公益社団法人臨床心臓病学教育研究会 会長

社会医療法人仙養会北摂総合病院 理事長 木野昌也

 

解答

症例112
心電図異常の精査目的にて紹介来院した63歳女性

診断:非特異的T波の異常(孤立性左室乳頭筋肥大)
心電図は正常洞調律。P波、PR間隔、QRS電気軸に異常はない。QRS波にも異常はない。胸部誘導におけるQRS電位、R+Sも正常である。しかし四肢誘導でT波は平低化、胸部誘導V3からV6にてT波が逆転、陰性T波を認める。鑑別診断として、虚血性心疾患、心室の一部に限局した左室肥大、電解質の異常といったものが考えられる。 冠動脈CT検査では、冠動脈に異常は見られない(図1)。電解質にも異常は見られない。
心エコー検査では、大動脈弁、僧房弁等に異常なく、左室壁、心尖部にも肥厚は見られない(図2)。しかし左室短軸像で乳頭筋、特に左室後乳頭筋が17x11mmと肥厚していることが分かる(図2、図3)。正常人における左室乳頭筋の厚さは短軸像で0.7±0.2mmとされ、左室乳頭筋が11mmを超えると肥大があるとされている。孤立性乳頭筋肥大と心電図所見の関係について検討した報告によると、本症例のように心エコー検査で左室壁の肥厚なく、乳頭筋の肥大のみの異常を認めた29例のうち、陰性T波を10例(34%)に認めている。11年と18年経過観察された2症例は、経過観察中に左室肥大が出現したことから、乳頭筋に限局した肥大型心筋症ではないかと考えられている。本症例に見られたV3-6誘導での陰性T波は孤立性左室乳頭筋肥大によるものと考えられる。

参考文献
kobashi A, Suwa M, Ito T et al: Solitary papillary muscle hypertrophy as a possible form of hypertrophic cardiomyopathy. Jpn Circ J 1998;62:811-816

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