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症例111 検診で心電図異常を指摘された 12歳の男性

男性/12歳

問題

症例111
検診で心電図異常を指摘された12歳の男性

【主訴】心電図異常精査
【現病歴】 学校検診で心電図異常を指摘され精査目的に受診された。特に症状はなく、野球部で激しい練習をしている。
【既往歴】川崎病罹患歴無し
【家族歴】心疾患の家族歴無し。
心電図(図1A,B,C ほぼ連続して記録したもの)を示す。
診断は何か?
適切な検査と指導は?

(出題者)公益財団法人田附興風会医学研究所
 北野病院心臓センター 循環器内科主任部長 猪子森明

 

図1 外来受診時の心電図

解答

症例111
検診で心電図異常を指摘された12歳の男性

房室接合部調律
心電図はいずれも60台/分のリズムで、P波とQRSの関係をみると、図1Cでは正常P波(II,III,aVFで陽性)と正常QRS波が短いPQ間隔で連続しており、図1BではP波がQRS波と重なり、図1AではP波はQRS波の後ろに見られ、かつ逆行性P波(II,III,aVFで陰性)となっている。房室接合部の自動能は30-60/分とされているが、本例では洞調律のリズムと房室接合部のリズムがほぼ同じレートとなっており、P波が先行、QRS波の先行を交互に繰りかえしている状態となっている。QRS波の先行がある程度以上となると房室接合部から逆行性に心房が興奮するため図1Aのような逆行性P波が形成されるようになる。図1B,Cは心房と心室が別々の調律で動いている状態で房室解離といわれる。房室接合部調律を認めた場合には、洞不全症候群と房室接合部頻拍を除外するための精査が必要である。

学校検診で房室接合部調律が認められた場合、日本小児循環器学会の「器質的心疾患を認めない不整脈の学校生活管理指導ガイドライン」によれば安静時の心室拍数が80/分以下の場合は運動負荷を行い、負荷で洞調律となって心拍数が増加する場合は「管理不要」と判断される。健診で発見される房室接合部調律の大部分はこれに該当する。ただし、安静時心室拍数が80/分以上の場合は上室頻拍に準じた管理、運動負荷で洞調律の増加が悪いときには洞不全症候群に準じた管理が必要とされる。本例では心エコー等の精査で器質的心疾患は否定され、トレッドミルの際に正常洞調律となり(図2)最大心拍数180/分まで増加することが確認できたため管理不要と判断された。

【図2トレッドミル検査中の心電図】

参考文献
1. 吉永 正夫 他:器質的心疾患を認めない不整脈の学校生活管理指導ガイドライン(2013年改訂版)日本小児循環器学会雑誌29: 277-290 2013

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