症例63 健診にて心電図異常を指摘され来院 男性 67歳 2013.2

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症例63

健診にて心電図異常を指摘され来院

男性 67歳 2013年2月掲載分

解答・解説

症例63の解答と解説

解答:
心尖部肥大型心筋症
 
解説:
 左室誘導で高電位と伴にST低下と陰性T波を認める。特に顕著な所見としてV3-5誘導で、ST低下とともに深い陰性T波(V4誘導で1.0mV)を認める。時に1.0mVを超える巨大な陰性T波(Giant negative T wave)を認めるのが特徴である。
心臓超音波検査では、心尖部に限局した心室壁の肥厚(矢印)を認めており、心尖部肥大型心筋症の特徴を示している。
超音波検査図
 肥大型心筋症は、明らかな原因なく左室ないし右室心筋の心肥大をきたす疾患であり、不均一な心肥大を呈するのが特徴である。通常、左室内腔の拡大はなく、むしろ狭小化し左室壁の運動は正常か過大である。
肥大型心筋症は、心室筋の肥大する部位とその程度により下記の基本病態が知られている。
 1.心室中隔の著明な肥大のために左室内腔が狭小化し、その結果、左室流出路に狭窄が存在する場合、特に閉塞性肥大型心筋症と呼ぶ。
 2.肥大部位が特殊なものとして、心室中部閉塞性心筋症(肥大により心室中部において左室内腔が狭窄する場合)、心尖部に肥大が限局する心尖部肥大型心筋症がある。
 3.肥大型心筋症の経過中に、肥大した心室壁厚が減少し菲薄化し、心室内腔の拡大を伴う左室収縮力の低下をきたし、拡張型心筋症様の病態を示す場合、拡張相肥大型心筋症と呼ばれる。一般に肥大型心筋症の予後は、突然死の危険因子の有無で影響される。ここで示す心尖部肥大型心筋症の予後は概ね良好である。しかし、時に長い経過の後、左室収縮能の低下が見られる症例がある。肥大型心筋症の中で、拡張相に至る症例の出現率は2~16%と比較的少数であるが、予後は特に悪いので定期的な経過観察が必要である。

 
参考文献
土居義典、笠貫宏、川名正敏他:循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2006年度合同研究班報告)
肥大型心筋症の診療に関するガイドライン(2007年改訂版)、日本循環器学会

木野晶也(ジェックス会長・北摂総合病院院長)

 

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心電図からどのような病態が考えられるでしょうか。

出題:木野 昌也(ジェックス会長・北摂総合病院院長)

 

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図1 67歳 男性 心電図