症例57 前胸部痛 男性 69歳 2012.8

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症例57

前胸部痛

男性 69歳 2012年8月掲載分

解答・解説

症例57の解答と解説

症例の解説:急性前壁心筋梗塞
 急性心筋梗塞の典型例である。当院救急搬送時、救急室でのバイタルサインは、BP114/75、pulse 94, SpO2 100%(酸素鼻腔6L/分)。急性前壁梗塞の診断にてバファリン330mg、プラビックス300mgを服用し緊急CAGが施行された。診療所受診時にショック状態であったことから、冠動脈の重症病変が考えられるため、まず右大腿部より大動脈バルーンパンピング挿入。IABP下で10時45分に冠動脈造影を施行。#6に90%狭窄を認め、同部位を開大しBMSステント(DriverSprint 3.5×24)が留置された。

冠動脈造影図(拡大版はこちらをクリック)

図1左冠動脈 図2右冠動脈 図3左冠動脈 #6にステント留置
冠動脈造影図1 冠動脈造影図2 冠動脈造影図3

心電図経過(拡大版はこちらをクリック)

心電図経過

 午前10時45分、左冠動脈#6の狭窄は改善され血流は再開された。その後、V1−5にてT波は逆転。
幸いなことに心筋逸脱酵素の上昇は10月20日に限定され、しかも極めて微量であった。2ヶ月後の心電図では、胸部誘導(V1−6)で異常q波はなく、R波の減高もみられない。STTの変化もみられない。心筋梗塞はほぼ予防できたものと考えられる。

 2010/10/19 

 10/20 

 10/21 

CPK(<200)

74

682

165

CK-MB(<25)

19

57

23

 急性心筋梗塞では、できる限り早期に血流を再開することが基本である。そのため、地域における医療機関の連携、すなわち心筋梗塞における地域連携パスが推進されている。他の医療機関より紹介を受けて緊急冠動脈造影治療を行う施設では、病院到着時より90分以内に冠動脈血流を再開させる態勢(door to balloon time)が求められている。この症例は、地域の診療所から近隣の一般病院へ救急搬送された。その医療機関で緊急冠動脈治療が必要と判断され、冠動脈治療の専門の医療機関へ転送、心筋梗塞発症3時間以内に冠動脈血流を再開させることができた成功例である。

木野昌也(ジェックス会長・北摂総合病院院長)

 

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2010年10月18日、午後8時頃から、全身倦怠感を覚えるようになった。翌、10月19日、朝8時頃、冷汗を伴う前胸部痛を自覚。
自転車で、かかりつけ医を受診。午前8時半、診察室で血圧低下(80/?以下)、ショック状態となった。
同診療所でO2吸入、血管確保、ノルアドレナリンの点滴が開始され、午前9時15分、近くの病院へ救急搬送された。
胸痛は軽減し、血圧は150/?、血糖値は439mg/dlと増加。臨床症状と心電図変化から緊急処置が必要と判断され、当院へ救急搬送された。午前10時、当院救急室に到着、その際に救急室で記録された心電図を示す。

出題:木野昌也(ジェックス会長・北摂総合病院院長)

 

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心電図