症例40 労作時呼吸困難と倦怠感を訴え来院 女性 77歳 2011.3

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10. 肺塞栓症 

症例40

労作時呼吸困難と倦怠感を訴え来院

女性 77歳 2011年3月掲載分

解答・解説

症例40の解答と解説

解答:
右室肥大、右室負荷所見
 

解説:
 心電図は洞調律(心拍数87/分)、電気軸は+90°。第I誘導で深いS波、第III誘導でq波とT波の逆転をみる。
さらに特徴的なのは、aVRとV1でqr型を示すことである。両誘導ともr波は、先行するq波の深さと同じくらい高い。このr波は、負荷がかかった右室の電位を反映している。さらに胸部誘導で深いs波がV1-6まで見られ、しかもT波は胸部誘導全体、V1~6まで陰性化している。これらは、右室負荷の心電図に典型的な所見である。
患者は起座位をとり、頚静脈は下顎角まで怒張。
 動脈血のガス分析では、room airにて、pH7.48、PO2 56.1Torr、PCO2 26.3Torr、HCO3 19.2mmol/L、Base Excess-3.1mmol/Lと低酸素血症と低炭酸ガス血症を示し、急性呼吸性アルカローシスの所見であり、急性肺動脈血栓症の所見に合致する。心エコー検査では右室により圧排された心室中隔を認め(図2)、三尖弁逆流から算出した右室圧は45mmHgと推定された。造影胸部CTで肺動脈内に血栓を認め、肺動脈血栓塞栓症の診断は確定した(図3)。
 すぐにヘパリン、ワーファリンによる抗凝固療法開始。呼吸困難は劇的に改善し第23病日に軽快退院された。

図2 救急室で記録された心エコー図(短軸像)

心エコー図
心室中隔は、圧が上昇した右室(RV)により左室側に圧排され左室(LV)はD形になっている。

図3 胸部造影CT

胸部造影CT
造影された肺動脈内を閉塞する血栓(矢印)を認める
 入院時(2010年10月18日)から10日目(2010年10月28日)には自覚症状は改善、頚静脈の怒張も消失した。
この間の心電図の経過をみると、来院時に+90°と右に偏位(右軸偏位)していた電気軸は、経過とともに+30°へ左側に偏位し正常化している。第III誘導、aVFでT波は逆転しているが、aVRではqr型からrsへ、V1ではqrからrSへと正常化している。その2ヶ月後(2010年12月16日)には、心電図は完全に正常化した(図4)。
右室肥大に特徴的な上記の所見が、右室負荷が改善するとともに10日後には消失しているのは大変興味深い。

心電図の経過(拡大版はこちらをクリック)

心電図の経過
 右より、来院時(2010年10月18日)、翌日(2010年10月19日)、10日後(2010年10月28日)、2ヶ月後(2010年12月16日)の心電図の経過。
来院の10日後には、心電図の電気軸が正常化し右室負荷の所見は消失。2ヶ月後には心電図は正常になっている。

木野 昌也(ジェックス会長・北摂総合病院院長)

 

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出題:木野 昌也(ジェックス会長・北摂総合病院院長)

 

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