症例26 起立時のふらつき 男性 68歳 2009.12

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症例26

起立時のふらつき

男性 68歳 2009年12月掲載分

解答・解説

症例26の解答と解説

【解答】

(1)心房粗動、主に4:1房室伝導、時に、2:1、6:1伝導を示す

(2)二枝ブロック(完全右脚ブロック+左脚前枝ブロック)

(3)左室高電位

 

【解説】

 心房粗動は規則正しい粗動波を特徴とする上室性頻拍で、心房興奮速度の速さで、Ⅰ型とⅡ型の二種類に分類されている。Ⅰ型は心房興奮の頻度が、240~350/分の速度で心房ペーシングにより停止することができるものであり、Ⅱ型は、より速い心房興奮速度(350~450/分)で心房ペーシングの影響を受け難いものである。

 Ⅰ型の多くは三尖弁輪部を旋回する右房内マクロリエントリー性頻拍であり、下壁誘導において典型的な鋸歯状波形を示し、最近では「通常型」と呼称される。

心房粗動の発症機序(拡大版はこちらをクリック)

画像:心エコー図1

 I型以外のものは非通常型と総称される。心房粗動の自覚症状は、房室伝導比により左右され、無症状で経過するものもあるが、労作時 1:1 房室伝導から頻脈となり失神に陥ることもある。一方、4:1房室伝導の時には無症状である場合が多い。心房細動と比較すると頻度は少ないものの左房内血栓を作り脳塞栓の危険性が高いため、ワーファリンによる抗凝固療法の対象となる。通常型心房粗動は三尖弁輪部-下大静脈間の峡部を線状焼灼(カテーテルアブレーション)することにより根治可能である。カテーテルアブレーションによる成功率は90%以上で合併症も少なく、現在では第一選択の治療法とされている。前向き試験による抗不整脈薬との比較においても、カテーテルアブレーションの有用性が示されている。この症例では心房興奮頻度は約300/分、下壁誘導(Ⅱ、Ⅲ、aVF)にて鋸歯状波形を認めており、通常型心房粗動と診断された。電気生理学的検査にて確認の上、三尖弁輪―下大静脈峡部に対して高周波通電による連続焼却術(カテーテルアブレーション)が施行され、頻脈の回路は切断された。

 

心電図(拡大版はこちらをクリック)

画像:心電図

 

正常洞調律に復した後の心電図は、完全右脚ブロック+左脚前枝ブロックの二枝ブロックである。電気生理学的検査では、房室伝導には異常なく、HIS束以下の心室内伝導障害と考えられたため、現時点でのペースメーカー装着は不要と判断し、経過観察をすることとなった。

なお、aVLにおけるR波は1.4mVと(R in aVL >1.1mV)左室高電位を示しており、左室肥大の存在が示唆される。

 
参考文献
1. 日本循環器学会:循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2002-2003年度合同研究班報告)
不整脈治療に関するガイドライン(JCS2004)

 
2. 日本循環器学会:循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2005年度合同研究班報告)
不整脈の非薬物治療に関するガイドライン(2006年改訂版)

 

木野昌也(ジェックス会長)

 

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1年半前より高血圧に対して降圧剤(アムロジピン)を服用中。以前より時々不整脈を指摘されている。

起立時のふらつきにて来院。BP120/70、脈拍92/分、不整、身体所見に異常なし

 

出題:木野昌也(ジェックス会長・北摂総合病院院長)

 

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心電図