症例17 右胸痛を主訴に来院 女性 74歳 2009.3

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症例17

右胸痛を主訴に来院

女性 74歳 2009年3月掲載分

解答・解説

症例17の解答と解説

【解答】
 心尖部肥大型心筋症
 
【解説】 
 右胸痛で受診。心電図(03/8/25)でV3~V6にかけて陰性T波を認め、狭心症が疑われました。

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心電図 時系列

その後、右胸痛は徐々に軽快しましたが、V3~V6の陰性T波は逆に2006年から急に深く大きく(巨大陰性T波:giant negative T)となっていきました。

 

巨大陰性T波をもたらす病態には
1.心筋梗塞 2.心尖部肥大型心筋症 3.たこつぼ型心筋障害 4.QT延長症候群 5.脳血管障害(クモ膜下出血)
があります。
 本例では、臨床症状や心電図異常の経過から1、3と5は考え難く、4もQT延長はなく否定的でした。
本例の心エコーですが、2003年は正常でした。2005年から心尖部の一部に軽度心筋肥厚がみられるようになり、2007年には心尖部に局在する明らかな心筋肥厚を認め、心尖部肥大型心筋症と診断されました。
心尖部肥大型心筋症では、本例のように1~3年のうちに肥大の進展とともに陰性T波が急に深く大きくなり、巨大陰性T波を示すことがあります。
 また、興味深いことに肥大の進展に一致して血清BNPも2003~2005年は21.4~70.2pg/mlでしたが、2006~2008年には121.3~192.1pg/mlと上昇しました。また、心尖部肥大型心筋症は心電図に所見がみられても、心エコーでは早期には心尖部肥大の評価は十分にできず、異常なしとされることが少なくありません。
MRIが早期診断に有用とされていますが、日常的ではありませんので、経時的に心エコーを丁寧に行う必要があります。
また、本疾患の心電図変化は虚血性心疾患と取り違えられ、不適切な検査(冠動脈造影)や治療が行われることがあります。本疾患は予後良好で薬物治療も必須ではありませんので、経時的に心電図や心エコーを懇切に行い、早期診断されることが望まれます。
 この「ECG of the month」シリーズでは今まで1枚の心電図から診断を考えていただきましたが、今回のように心電図を時系列で診ることも診断と病態把握に非常に重要です。以前の心電図と比較することにより、微小な変化も見えてきます。

梅田幸久(ジェックス理事)

 

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右胸痛を主訴に来院。 心電図で陰性T波を認め、心筋虚血、狭心症が疑われたが…

 

出題:梅田幸久(ジェックス理事・梅田医院院長)

 

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心電図