心電図 今月の一枚

ECG of the month

タイトル:背景線

2017年12月

症例116 訪問看護師により意識障害の状態で発見され救急搬送された87歳男性

 

解答と解説

 

低体温による心電図(Osborn波)

 

心電図は心房細動、心拍数は101/分、左室誘導(V5)で高電位である。平均電気軸は+42度、QTcは0.52秒と延長している。
この心電図で特徴的なのは、Ⅱ誘導、aVR、aVF、V1、V5-6でみられるQRS波に続くJポイントにおけるノッチ(切り込み)とJ波である。一見すると幅広いQRS波の一部のようにみえるが、正確にはQRS後のJ波によるものである。このJ波は発見者(John J Osborn)の名前をとり、Osborn波と呼ばれている。
加温により翌日には正常の体温に戻った。その時の心電図を示す。心房細動は消失し、正常洞調律に戻っている。左側胸部誘導でT波の逆転を見るがOsborn波は消失している。


 

図2 翌日、正常体温時

 

図2翌日、正常体温時

 

 

この一連の心電図変化は、7年前(2010年4月15日)のものから、低体温時、そして翌日に体温が正常に戻ってからの変化を比較すると明らかである(矢印)。

 

図3 心電図の継時的変化(Osborn波を矢印で示す)

 

図3心電図の継時的変化(Osborn波を矢印で示す)

 

 

Osborn波は低体温の程度に応じてその変化が強くなる(図4)。
Osborn波の発生機序については、再分極時に心室の心内膜側と心外膜側との間で電気生理現象に違いが起きることによるとされている。心室壁におけるこの電気生理現象の不均一性は低体温の他に、高Ca血症、虚血などで観察されている。さらにBrugada症候群では、右側胸部誘導で同様のJ波を認めており、発生機序はOsborn波によるものと考えられている。Osborn波は左側方向から下方へベクトルが向いている。したがってOsborn波は下壁誘導や側壁誘導で観察されることが多い。一方Brugada症候群では、右側胸部誘導に向かうベクトルを示すため、J波は右側胸部誘導で観察される。
Osborn波については心室細動や突然死との関連性について報告がある。同様のJ波は早期再分極の症例でも観察されており、突然死との関連性について議論がある。

 

図4 低体温とOsborn波

図4低体温とOsborn波

 

参考文献
1. Krantz MJ and Lowery CM: Giant Osborn waves in hypothermia. New Engl J Med 2005;352:184
2. Maruyama M, Kobayashi Y, Kodani E et al: Osborn waves: history and significance. Indian Pacing Electrophysiol J 2004;4:33
3. Haissguerre M, Derval N, Scher F et al: Suden cardiac arrest associated with early repolarization. New Eng J Med 2008;358:2016

 

木野昌也(社会医療法人仙養会北摂総合病院)

 

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