医患共尊
一昔では考えられなかった様なハイテク技術が医療にも取り入れられ、今まで診断の出来なかった病気の診断や治療に役立っています。しかし、いつの間にか最近では病院にいくとまず簡単な問診の後、すぐに確定診断のためにこれらの検査を行っているという傾向があります。医療診断の精度が高いということは、同時に医療費も高くなることを意味します。
実際、よく患者さんから耳にする言葉は「あの病院では、今まで身体を診察もしてもらったことがないし、それに先生に一回も聴診器を当ててもらったことがない」「先生の言葉遣いがなっていない」「受付事務の態度が悪い」など不満の声が聞かれることです。皆様からお聞きする医師たちの姿は、私たち年配の医師たちの姿とは全く違った姿に映るのです。そして経験の少ない外科医の手術や、臓器提供などの医療問題がますます、医の倫理観を複雑なものにしているのです。加えて産科・婦人科や、小児科などの医師の数が減少している背景には、医療訴訟を避けようという医療者側の葛藤も見逃す事は出来ません。
今後どうすれば、医師、看護師、医療関係者との間に、ともすれば失われつつある相互の信頼関係を築くことが出来るでしょうか。私は皆様と共に医療現場の姿を公平な立場で眺めた場合、どうすればお互いに尊敬の気持ちを持って新しい医師と患者の関係を作ることができるのかを、一緒に考えてみたいと思います。
■信頼できる医師の条件とは:
私が52年間の臨床医としての経験を通して、「信頼のおける医師」としての条件を挙げてみることに致します。これは看護師、検査技師をはじめ、全ての医療者にもいえることだと思います。
- 礼儀正しく、言葉遣いも丁寧で、服装もきちんとしている
- 雰囲気もソフトで、明るい性格である
- 病歴を心身両面から詳しく聞き、患者と正面を向いて話す
- 医療用コンピュータばかりを眺めてはいない
- 診療も丁寧にテキパキと行い、全身を詳しく診察する
- 聴診器で時間を掛けて、心音や心雑音を聴く
- 必要最小限の臨床検査を指示する
- 看護師や他のスタッフにも適切な配慮をしている
- 検査結果については、診察のあとで詳しく説明する
- 必要であれば、すぐに近くの医療機関や、専門医に紹介する
- 診断書や、紹介状も期日以内に書く
- 外来ではスタッフと私語をしない
- 金銭や、謝礼は辞退する
- 処方箋の内容について説明する
- 殆どの臨床検査は自分でこなすことができる
- 患者の症状について、研究熱心である
- 社会人としての良識を持っている
- 喫煙はしないし、患者にも禁煙を勧める
- 自己管理を行い、何時も健康的である
- 日常生活についてアドバイスする
- 患者さんの言葉を尊重し、率直に耳を傾ける
- インフォームド・コンセントを十分に行っている
- 必要な際には家族を交えて、病気のことについて説明する
- ジェネリック薬剤の処方箋を書くことを厭わない
- 他の病院への連絡をすぐにする
- 専門分野以外の医学的常識を持っている
- 外国での臨床経験が日本での診療に生かされている
- 何よりもプライバシーを大切にしている
- 年齢にかかわらず、プロとして癒しの心を持っている
- 社会活動にも積極的である
- 活動的であれ(be active)
- 常識的であれ (be common sensed)
- 忍耐強くあれ (be patient)
- 思慮深くあれ (be thoughtful)
- 謙虚であれ (be humble)
- 正直であれ (be honest)
- 冷静であれ (be calm)
- 協調性を持て (be cooperative)
今まで述べました30項目の信頼できる医師とは、誰もが求めている本当の医師の姿です。私も可能な限りこれに近づこうと努力していますが、ともすれば日常の仕事に追われて、実行していない項目もあり残念に思っています。
医療者であっても一生のうちに必ず一回や二回は患者になって同僚や、他の病院の世話になる事があることでしょう。ですから患者さんの気持ちになって物事を判断しなければならないと思っています。
では自分や家族が病気になり、患者の立場に立って考えて見た場合、スマートな患者になるためには、以下に挙げる事柄について普段から気をつけておけば良いと思われますので、紹介しておきましょう。
- 自分の病気のことについて要領よく説明しましょう
- 未成年者が病気の場合は、保護者が付き添って説明する必要があります
- 自分の病気についてある程度の予備知識が必要です
- 身内に医師がいるとか、話しても診療内容に差はありません
- 自分や、家族の社会的地位について話す必要はありません
- ドクター・ショッピング(お医者さんの梯子)は避けて下さい
- テレビの健康番組や新聞などの情報をすぐに信じないようにしましょう
- 診察時間を変更する場合の電話は要領よく短くしましょう
- 自分の症状に関して、長々と電話での問い合わせを避けましょう
- サプリメント(補助食品)の利用には気をつけましょう
- 医師から処方された薬は自分の判断で変えないでおきましょう
- 自分が処方してもらって薬を家人や、知人に服用させないこと
- 家族が入院した際には、誰に連絡するかを決めておきましょう
- 主治医の説明は、家族や中心となる人と一緒に聞きましょう
- 病院内での携帯電話は、出来るだけ避けましょう
- 入院中は、無断で外出しないようにしましょう
- 病院内の公衆電話も短めに話しましょう
- 入院中も自分自身の一日のスケジュールを作りましょう
- 盆や歳暮など、医師へのつけ届けは不必要です
- 医師にお礼をする場合は、率直に感謝の気持ちを表すことが大切です
- 主治医の自宅には電話は掛けないようにしましょう
- 研修医制度がスタートしたばかりだということを知っておきましょう
- 医師がどの大学出ということより、人間的に優れているかが大切です
- 日本の専門医は守備範囲が狭く、オールマイティではありません
- 人間ドックで入院したとしても、病院の規則に従って下さい
- 看護師も医療チームの一員です。医師と同じように接しましょう
- 検査の都合が付かなくなった場合は、すぐに連絡しましょう
- 毎日、運動を欠かさない習慣を身につけましょう
- 入院中に起こる一時的な呆けは大丈夫です
- 毎日、明るく前向きに物事を行うことが大切です
- 病院やクリニックが自分に合わないときは変えましょう
■クリニックや病院の外来診療について:
ここで皆様が病院、特に大学病院や大病院の外来にいく前に知っておいたほうが良いと思われる事柄についてお話しましょう。機械でも何でもそうですが、ハード面(建物)とソフト面(人材)があります。
- 病院は建物が大きくても、医療のレベルが最高ではありません
- 有名なクリニックや病院で待ち時間の長いのは仕方がありません
- 大学や関連病院では、学期ごとに主治医が大学人事で変わります
- 若い医師は研究熱心ですから、有名な先生よりも丁寧に診察します
- 病院の医師が研修医かどうか、分かるようにしたいものです
- 医師のキャリアを知る方法が、あれば患者は助かります
- 血圧はクリニックや病院で測るよりも、自宅で計りましょう
- 診察の前に自分の症状や気付いたことを、メモに書いておきましょう
- 病院へは診察を受けやすい服装をしていこう
- 診察結果は出来るだけ、主治医から詳しく聞こう
- 友人や知人の紹介で評判の良い医師に診てもらおう
- 医師にもピンからキリまである
- できるだけ薬は少なく処方してもらいましょう
- 何か症状が起こったときは、すぐに主治医に相談しよう
- 腹痛や、胸痛は我慢して症状が治まるのを待つのは禁物
- 一瞬失神しそうになり手足が痺れたら、すぐに病院へ
- 窓口事務、薬局の接客態度や、言葉遣いが悪いところがある
「すべての職業は社会に対するサービスである。そして医師もまたその職業である」と言うのが、アメリカ医師会の理念です。医師は勿論、病院に勤務する医療関係者がサービス精神に徹して仕事をすることが大切であることは、言うまでもありません。医師も患者に共に相手の立場にたって物事を考え、お互いに尊敬の念を持つ事が、大切ではないでしょうか。

