アリゾナ大学留学体験記

  <アリゾナ大学留学記>

滋賀医科大学6年 細羽 創宇

 この度はすばらしい経験をさせていただき、誠にありがとうございました。もう遠い昔のことのように感じますが、アリゾナでの一ヶ月の体験を記しておきたいと思います。
 私が渡米したときは真夏の時期で、朝9時ごろにはすでに気温が40℃に達していました。しかし日中はほとんど病院にいたため、病院内で夏を感じることはできませんでした。
 一日は朝7時のカンファレンスから始まりました。 Imaging, Cath, EKG, Cardiology, Transplant などの種々のトピックや症例提示などを、朝食を取りながら聞きました。聞き取るのに精一杯でしたが、どの話題も目新しく大変興味深いものでした。またFellowやAttendingの先生方がでプレゼンテーションを担当していましたが、話術の巧みさだけでなくスライドの美的センスにもおおいに魅了されました。その後に行われるCCU round, Cath, EKG round, Consultには自由な参加が認められており、昼のカンファレンス終了まで集中力を要するものでした。昼にはStudent lecture, Fellow conference, Resident lecture等も自由参加の形式で、ここでも昼食をいただけるのはうれしい時間となりました。Student lectureやResident lectureは発言を求められることもあり、積極的に参加することができました。また週に一度は、内科全体のGrand roundがあり、各診療科のAttendingが持ち回りで個性豊かなプレゼンテーションをして下さいました。
午後はCath lab, Echo lab, Outpatient clinicなどを見学させていただきました。どの部署でもたいへん親切に教えていただけるのと同時に、常に質問を求められる時間でした。
 私の医学的知識の未熟さもあったのですが、不慣れな英語をやり取りしていくなかで、そのすき間をかなり埋めることができたように思います。特に研修医の症例に対する取り組み方や知識の吸収の仕方等は日本の優秀な先生方とほぼ同じスタイルではなかったかと思います。
 私にとってこの留学は、日本の医療を考え直す契機ともなりました。その国なりの文化や風土があり、保険制度や生活背景等が絡み合ってその国独自の医療体系が形成されていることを感じました。日本にないものを取り込むことによって、日本の医療の質を向上でき、そして高水準の臨床技術を日本の医療に取り入れてみたいという気持ちが強くなりました。自分の医師として将来はどうなるかわかりませんが、今回の臨床研修を生かして、卒後は、アメリカで臨床研修を積むことを目標に循環器内科を目指して頑張っていこうと思っています。
 今回の留学は自分にとって最高の経験になりました。
 今回の短期留学実現のためご援助下さいました横浜市立大学名誉教授の松本昭彦先生、ジェックスの高階經和理事長、木野昌也会長をはじめJECCSの皆様、Dr. Ewy、アリゾナ大学の皆様、ホストのジェリー、同行した横浜市立大学の岩花さんにも、感謝の意を記しておきたいと思います。
 最後になりましたが、私達は、研修の終わりにあたってアリゾナ大学より大変立派な「修了証」を頂いたことをご報告いたします。本当にありがとうございました。 修了証Dr.Ewyと修了証を手にする岩花さんと筆者


<アリゾナ大学エクスターンシップ報告書>

横浜市立大学医学部5年 岩花 清佳

 7月17日から8月11日まで、私はアリゾナ大学循環器科にてエクスターンシップを体験しました。4週間という期間の中で、たくさんのことを学び、体験することができたので、ここにその報告をさせていただきます。
 まず初めに感じたのは、海外、特にアメリカで働くことはそれほど特別なことではないということです。州にもよるかもしれませんが、アリゾナ大学病院では、レジデントやドクターの中に、台湾やインド、中国、韓国、イラン、メキシコなどなど、様々な国から来ている人がいました。また看護師やパラメディカルの中にもたくさんの外国出身者がおり、さすが多民族国家だと感じました。日本にいたときには、臨床留学はとてつもなくすごいことのように感じていましたが、アメリカでは留学生を受け入れる体制と文化的な基盤が整っているように感じました。
 循環器科の実習では、種々のconference, Consult team, CCU team, Echocardiogram, Cath, Outpatient clinic, Lectureなどの他、核医学検査やダイナミックCTなどの検査・読影などを見学しました。  先生方は皆とても親切で、初めての日本からの留学生である私たちをすんなりと受け入れて下さいました。
修了証
1.Conference
Imaging conference, ECG conference, Fellow conference, Cath conference, Grand conferenceなどのカンファランスに出席していました。難しくてついていけないことも多かったけれど、4週間出席し続けた後には、最初の週よりも大分話の内容が分かるようになっていたと思います。とくに面白かったのはGrand conferenceで、様々な分野の先生方が週に一度、お昼の時間に講義をされます。20世紀で最も発達した循環器の分野、生体肺移植について、など、自分の専門でない分野の最新情報にもついていくことができます。講義をされる先生方もとても気合が入っているので、内容はもちろん、スライドや喋りがとても面白いです。このようなところにも、アメリカのプレゼンテーション能力の高さが現れており、私たちも真似できたらいいなと感じました。最終週の金曜日には、Fellow conferenceで15分程度、プレゼンテーションをする機会をいただきました。私はたこつぼ型心筋症について、ケースプレゼンテーションをしたのですが、しっかり準備した気でいても、やはり本番になるとなかなかうまく話せず、もどかしい思いをしました。慣れないうちは丸暗記するくらいでないといけないと感じました。
2.Consult team
 日本でいう併診を専門的に行うチームで、他の内科やERなどで対処できない循環器系の問題が生じた際にConsultを受け、治療方針などのアドバイスを行います。また毎朝心電図を50件くらいチェックするので、正常な心電図から心筋虚血、基本的な不整脈、ヘミブロックなどの心電図まではたいてい読めるようになりました。なかなか数をこなさないと心電図を読むのは難しいと思うので、これはとても大きな収穫だと思っています。また、治療方針を決定する際、毎回といってよいほどFellowの先生が信頼性のある論文を引いてきてくれるので、とても勉強になり、またEBMが根付いていることを実感しました。
3.CCU team
 CCUの患者さんの管理を行います。AttendingのドクターはFellowやResidentのショートプレゼンテーションを参考に、治療方針や、その病態生理学的な理由を教えてくださいます。ここでも教育の基盤ができていることを感じました。また、病院内に通訳サービスがあるということを知ったのもCCUです。スペイン語をしゃべれる医師や看護師は大抵近場にいるのですが、ロシア語や中国語、韓国語などになると、病院の通訳サービスに電話をかけて、通訳者を通して会話をします。日本では、日本語を全く話せない人はめったに来ないので、ここでも多民族国家、アメリカを感じました。
4.EchocardiogramなどImaging
 これまでEchoは見えづらいしよく分からないと思っていたのですが、やはりたくさんの症例を見、説明してもらったことで、かなり読影する力がつきました。非侵襲的な検査である上、日本ではそれほど高価な検査ではないので、これからもその利用価値はどんどん上がってくると思います。Echoの先生は他にもダイナミックCTやMRの検査も見せてくれました。最近のダイナミックCTは冠動脈の走行まで詳しく追え、EFや心室の肥大だけでなく、冠動脈の石灰化度や狭窄部位などまで詳しく分かります。検査としてのカテーテル検査にとって替わってしまうのではないかとすら思ってしまいました。ただし、カテーテル検査は病変が分かったと同時に治療も施せることから、やはり虚血の疑わしい症状をもつ患者さんにおいてはカテーテル検査が優先されるだろうと思います。
5.Cath
 アメリカでは虚血性心疾患を患う患者さんが多く、CABGもよく行われますが、カテーテルの適応もかなり広がってきています。角度がRAO, LAO, APのDiagonal, Cranial, Caudalなどのように、細かく分かれていました。また大学の実習中には見る機会のなかった、血管内エコーや心臓移植後の心筋バイオプシーなども見ることができてよかったです。
6.Outpatient clinic
 最も、日米の違いを感じた場面でした。高血圧のフォローなどでも、家族連れや夫婦で訪れることがほとんどで、夫婦が二人とも同じ先生にかかるなど、日本の大学病院ではみたことのないような場面がたくさんありました。また、患者さんと医師の関係がとてもフレンドリーで、フランクに話しあっている印象がありました。また、身体所見をとることをとても重要視していて、とくに聴診の仕方が勉強になりました。これまで、S1やS2、S3など、理論は分かっていても、全く聞き分けることができませんでした。これは勉強不足のせいもあるけれど、やはり聴診などの身体所見を重要視しない日本の診療にも原因があると思います。身体所見は、診断の大きな一助となるだけでなく、患者さんとのコミュニケーションの一つでもあると、今は感じています。患者さんの体に触れることは、目を見て話すのと同じくらい、それ自体が大切なのだと思いました。

   以上のように、それぞれの科について詳しく述べてきましたが、実習全体を通じて特にいつも感じていたことは、「話す」ことの重要性です。あちらでは学生もドクターも、とてもよく「話し」ます。毎日の回診の際、ほとんどカルテやチャートを見ずに、何人もの患者さんのデータや全身状態を把握し、チームのメンバーにアセスメントをショートプレゼンテーションするからです。これは記憶力というより慣れなのだな、と思いました。「話す」ことによって、考えること、覚えること、そして意見を出し合うことができるようになり、それらはチーム医療の特長を最大限に伸ばしてくれるものだと感じました。日本でこれから実習していく際に、ぜひ自分の中にも取り入れていきたいと思っています。
   最後となりましたが、このように海外での臨床実習をするという、貴重な体験をする機会を与えてくださった、横浜市立大学名誉教授の松本昭彦先生、JECCSの高階經和理事長、また、さまざまなサポートをして下さった事務局の若林さん、ならびに多くの先生方、関係者の方々、本当にお世話になりました。この経験を生かして、バランスのとれた、立派な医師を目指していきたいと思います。
 どうもありがとうございました。
サーバーハートセンター
実習先のサーバーハートセンターにて

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